N1と定量、両方の観点を持ったアプローチが必要
佐々木:最近はN1を起点にして考える方が増えてきました。定量面とN1の両方の観点を持ったアプローチをとる方が増えたなと。データだけでなく、顧客の温度や熱量・手触り感に着目する人が多くなったと思います。
長:そうですね。定量とN1のどちらが必要かといった議論もありますが、実は両方必要なのですよね。定量だけでなく、N1でもとらえる方が増えていることは、正しい顧客理解に近づきつつあるといえるでしょう。
9segs®(ナインセグズ※1)ではフレームワークを用いて、各セグメントの典型的な顧客を理解するためにN1を考えています。そしてそこから出てきた仮説やアイデアが世の中でスケールできるか、ビジネスとして意味があるかを定量で検証するというように、N1と定量面の両方でアプローチしています。
※1 9segs®:自社・競合ブランドの顧客を「9つの顧客セグメント」に分解し、セグメントごとの購入心理や購入行動データを分析するメソッド
顧客調査が活用できている企業の特徴は?
長:顧客調査の活用についてうかがいます。顧客理解を深めることはもちろんですが、調査で得られた示唆を活用できる領域について詳しく教えてください。
佐々木:たとえば、商品が持つ価値を流通業界の皆さんにしっかりと理解いただくためにデータが活用されるケースがあります。営業担当者の資料やスクリプトにもマーケティングの意思決定の根拠として反映しやすいですよね。
長:たしかにマーケティング領域にとどまらず、営業やファイナンスなど組織全体に浸透させていくことも重要になりますよね。組織全体で顧客調査や顧客データの活用ができている企業には、どのような特徴があるでしょうか。
佐々木:簡単なところからスタートする、もしくは通常の業務フロー内で顧客理解のためのデータ活用の機会が習慣化されている企業様ですね。
マクロミルは「Build your Data Culture(データカルチャーを構築する)」というビジョンを掲げていますが、データネイティブな発想での課題解決実現に向けた取り組みとして企業様に常駐させていただくケースもあります。この場合、活用の頻度が増え、範囲も広がるため、企業様内でデータをもとに判断する環境が構築されやすいです。こうした企業様は「疑問が出た時はデータに立ち返る」という習慣がついてきます。
長:他にもありますか?
佐々木:取得したデータを1回の使用だけで終わりにしていないかという点も重要なポイントです。部門のサイロ化の話にもつながりますが、「全社を見渡すと他部署で同じような調査を実施しているようだ。マクロミルがリードして最適化してほしい」という相談を多くいただきます。データの連続性をとらえ、そこから意味を見いだすことが大切だと考えます。
そして顧客調査だけで終わらせないことも重要ではないでしょうか。最初にお伝えした通り、顧客データは断片的で、過去の実績に過ぎない、つまり静的なデータです。だからこそ、動的なデータを提供することで、企業様がより深掘りできると考えています。
長:おっしゃる通り、消費行動データひとつにしても、数字を分析するだけでは何がその人の気持ちを動かして購買行動に移らせたかはわからないものです。購買行動を起こす原因となった「顧客の心理」をきちんと理解することも忘れてはいけないですよね。