3ステップで解説:CIBSの実行手順
MarkeZine:では、CIBSを実践する際の手順について、具体的に説明をお願いします。
ステップ1:通常の5~10倍で日予算を設定(ペーシング機能解除)
西川:3つのステップに分けてご説明します。まずステップ1では、CIBSを実装するキャンペーンの日予算を、通常よりも大きな額で設定します。
皆さんが気になるのは「大きな額とは?」というところだと思います。この最適な額については我々も研究中で、ナハトさんも様々なパターンで検証して下さっていますが、今のところ、通常の10~15倍の額で日予算を設定すると効果が出始めることがわかっています。競合の状況を含めた市場動向によって最適な設定額は変わってくるでしょう。
ステップ2:キャンペーン予算またはアカウント予算の設定(上限額の設定)
西川:ステップ1で日予算を大きく設定するので、実際に配信が爆発してしまわないよう、ステップ2では最大出稿額を設定します。「キャンペーンの全体予算」「アカウントの予算上限」に関しては、ペーシング機能の影響がないため、ここで設定した予算額を超えて広告が配信されることはありません。
栗田:日予算をどんなに高く設定しても、キャンペーン予算の上限に達すると、配信は停止・制限されます。ですので、広告費が爆発的に上がってしまうリスクはここで回避することができます。ただ、上限に達して配信が止まってしまうと、CIBSにより得られる効果が小さくなってしまうため、上限に達する前に手動で予算を引き上げ、その日の配信をさらに伸ばすという運用を我々はリアルタイムで行っています。
MarkeZine:第一にはCIBSにおけるリスク回避のために、加えてより高い成果を上げるために、このステップが重要なのですね。
西川:はい、予算の上限額は現実的なラインで設定するよう注意していただきたいです。
栗田:たとえば、マス媒体で広告を打った後は、急激に獲得件数が伸び、配信が一気に伸びてしまうことがあるので注意が必要です。他にも、不可抗力で読めない事態は起こり得ますし、ASCではキャンペーン単位での上限設定はできないため、アカウント単位で上限を設定する必要があります。
ステップ3:目標単価の設定(目標CPA設定/過度な配信の防止)
西川:ステップ3では、キャンペーン入札戦略で目標単価を設定します。これは保証値ではなく、あくまで目安値です。たとえば、2,000円と設定したから、必ず2,000円になるわけではありません。配信時には、ここで設定した目標CPAを目指すロジックが働くため、ペーシング機能が外された状態でも、CPAを目標に近づけながら過度な配信を防ぐことができます。
MarkeZine:CPAの目標値は、どのくらいで設定するとよいのでしょうか?
西川:目標CPAに関して、現在私たちが確認している範囲では、目標CPAの約10%減を狙うことで効果が出ています。CPAを10%程度下げつつ獲得数を維持し、同時に予算上限を外すことで大幅な出稿増を実現できることになります。
しかし、通常の半分や10分の1など、目標CPAを極端に低く設定すると、システムが対応できず、配信量が著しく減少する傾向があります。かといって通常より高いCPAを設定すると、獲得数と配信量は増加しますが、効率性の面で意味をなさない場合があるので見極めが必要です。
この点において、ナハトさんの運用力は際立っています。キャンペーンを見ると、目標単価がリアルタイムかつ適切に調整されている印象です。
人力による対応が必須?「CIBS」活用時のポイント
MarkeZine:CIBSを実践する際は、人力によるリアルタイムな運用が必要となるのでしょうか。
栗田:人間による運用コミットは一定必要だと感じています。広告配信が0時から開始されたとして、予算を大幅に増額した結果、朝起きた時に想定外の大規模出稿が発生していた……といったことも十分に考えられるからです。
西川:そうですね。たとえば、通常のキャンペーンと併走させたり、小規模のA/Bテストから始めたりするなど、人による対応を含め、様々な試みがリスク管理として必要になってくるでしょう。
MarkeZine:最後にCIBSに関心をもった読者に向けて、活用時のアドバイスをいただけますか。
栗田:CIBSは新しい運用方法であり、また複数のロジックを組み合わせて編み出された手法であるため、いわゆる「虎の巻」のようなものが存在しません。最も効果的なアプローチは、仮説検証を繰り返し、様々なパターンを継続的に検証することです。そうして、成功したパターンを拡大していくのが現時点での最適解だと考えています。
必ずしも大きなリスクを取る必要はないと思いますが、私たちがCIBSによって結果を出せているのは事実です。特定のクリエイティブが高いパフォーマンスを示している場合や、CVが好調な時期にこの運用手法を活用すると、CV効率を高めながら、出稿額を大幅に増やしやすくなります。出稿額の増加は、結果としてクライアント様の売上拡大・事業成長に繋がるので、リスクの観点さえクリアにできれば、非常に有用な手法だと考えています。
西川:そうですね。リスクをカバーするための設定方法もしっかり存在していますから、リスクを最小限に抑えつつ、積極的にチャレンジしたい広告代理店様や広告主様にぜひ活用していただきたいと思います。