SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第108号(2024年12月号)
特集「2025年・広告の出し先」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

心を掴む「ブランドの世界観」の作り方 アートディレクターくぼたえみ氏が大切にする3つのポイント

 アートディレクターとして活躍する電通のくぼたえみ氏。スイーツブランド「パティスリーGIN NO MORI」のアートディレクションをはじめ、第一三共ヘルスケアの敏感肌向けボディケアシリーズ「ミノン」、カネボウ化粧品の「ミラノコレクション」など数々のブランドの世界観を魅力的に構築してきた。こうした心に響き、共感を生むアイデアは、どのようにして生まれるのだろうか。また“ブランドの世界観を築くこと”の最大の価値とは。くぼた氏に事例とともにうかがった。

見た目を作るだけではない、アートディレクターの仕事

──くぼたさんは電通のアートディレクターとして、日々どのようなお仕事をされているのでしょうか。

 アートディレクターは、「アート」という言葉から「素敵な見た目を作る仕事」と思われることがあります。しかし、最終的なアウトプットのディレクションは、仕事の全体プロセスの中の一部分でしかありません。それと同じくらい大事なのが、クライアントさんと対話をしながら課題を整理して、その企業やブランドならではの本質的な価値や魅力を見つけることです。

画像を説明するテキストなくても可
株式会社電通 第1CRプランニング局 アートディレクター くぼた えみ氏
1986年生まれ、東京都出身。2009年東京藝術大学デザイン科卒業、同年電通入社。 世界観づくりと、平面-映像-立体-空間にわたる総合的な企画&ディレクションを強みとし、ブランディングの仕事を主に手掛ける。国内外の受賞多数。

 お仕事の進め方はアートディレクターさんによって異なると思うのですが、私の仕事のプロセスを大まかにお伝えすると、下の図のような流れになります。

 最初にクライアントさんからご依頼をいただいたら、「ここを解決したい」というポイントを整理します。課題が明確になってきたら、対話を重ねながらクライアントさんの魅力──時にはご自身も気づいていない素敵な部分──をできるだけ多く発見し、その価値が伝わる「世界観」を構築します。最終的には、その世界観をグラフィックや、CM、店舗といった制作物に落とし込んでいきます。

画像を説明するテキストなくても可
くぼた氏の仕事プロセス

──これまでにどのようなものを手掛けられてきたのでしょうか? いくつか代表的なものを教えてください。

 岐阜の食品会社である銀の森コーポレーションさんとのお仕事は、当初「自社の強みを生かしたオリジナル商品を作りたい」というご依頼でした。しかしお話をしていく中で、銀の森さんの理念や溢れる魅力を商品ひとつだけで伝えるのは難しいと感じ、「パティスリーGIN NO MORI」というスイーツブランドを立ち上げることをご提案しました。ブランド全体の世界観づくりから、ロゴ、パッケージ、空間デザインなど、総合的にディレクションさせていただいております。現在はGINZA SIX店や麻布台ヒルズ店を始め全国6店舗まで拡大(2024年12月時点)。ノリタケさんと食器を共同開発したり、様々な企業とコラボクッキー缶を作るなど、ブランド領域を広げています。

画像を説明するテキストなくても可

 第一三共ヘルスケアさんの敏感肌向けボディケアシリーズ「ミノン」は、2020年のCMリニューアルのタイミングから担当させていただきました。「肌と大切な人を想う気持ち」に寄り添うブランドであることを踏まえて、やさしい人たちが集まるピンク色の銭湯の世界観をご提案しました。ブランド50周年の2023年には、グラフィックやCMだけでなく、お子様のうちからスキンケアの大切さを知っていただきたいという想いから、親子で楽しめる絵本も制作しました。

画像を説明するテキストなくても可

 また、カネボウ化粧品さんのミラノコレクションの案件は、担当して3年目となります。芸術性も機能性も非常に高い商品を長年開発なさってきた歴史を大切にしながら、クライアントさんの熱い想いを届けるべく、アートワークを制作しています。ミュシャや天野喜孝氏とのコラボレーション商品の施策では、アーティストと“ミラコレ”、両者が出会って初めて生まれる世界をご提案しました。フェースアップパウダー2024はブランド史上最大の話題化に成功。ミラノコレクションとして初めてXのトレンド入りを果たしました。

画像を説明するテキストなくても可

 このように、CMやグラフィックに限らず、ブランドの世界観を具現化するアウトプットに幅広く関わっています。

アートディレクターとして大切にしている3つのこと

──アートディレクターとしてクライアントの支援を行う際、大切にされていることを教えてください。

 大きく3つあります。1つ目は、クライアントさんの魅力をできるだけ多く発見し、「らしさ」を探ることです。これは、プロジェクトの最初のプロセス、【クライアントさんの課題と価値を見つける】段階で、大事にしています。この時、クライアントさんご自身が、そのチャームポイントに気づかれていないこともございます。

 たとえば、先ほどの銀の森コーポレーションさんは岐阜県の森の中にあり、「木苺がなっていたからジャムを作ろう」といったことを日常的にやってらっしゃいました。社員の皆さんは特別なことだとは思っていなかったのですが、都会に住む人からすれば憧れのライフスタイルですよね。そういった魅力と、渡邉会長のモットーである「ここだけ」という言葉からインスピレーションを得て、「森の恵みを楽しめる、ここにしかない森」というブランドの世界観を作りました。

画像を説明するテキストなくても可

 また、新しいブランドの名前を考えていた時、渡邉社長は“銀の森コーポレーション”について、「前身の会社名が『銀しゃり本舗』だったから、その名残で『銀の森』なんですよ」と、少し照れながら教えてくださいました。でも私は、「銀の森」という言葉は、なんて詩的で、幻想的で、美しい、唯一無二の響きだと思いました。そこで、ブランド名にも社名の銀の森をそのまま使い、「パティスリーGIN NO MORI」と名づけることをご提案しました。

 このように、対話の中でクライアントさんの魅力を発見できることがあります。「眠っている財産」を発掘できると、関わらせていただいた意義を感じ、嬉しい気持ちになるんです。

この記事はプレミアム記事(有料)です。ご利用にはMarkeZineプレミアムのご契約が必要です。

有料記事が読み放題!初月300円キャンペーン中!

プレミアムサービス詳細はこちら
※初めてMarkeZineプレミアム個人会員をご利用のお客様に限り利用可能です。
※お一人様1回限り有効です。

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラスをご契約の方は
・こちらから電子版(誌面)を閲覧できます。
・チームメンバーをユーザーとして登録することができます。
 ユーザー登録は管理者アカウントで手続きしてください。
 手続き方法の詳細はこちら

次のページ
右脳と左脳を切り替えながら「世界観」を作り上げる

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/01/09 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47588

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング