PLAZAのリブランディングとともに、新たな取り組みを開始
2026年に創業60周年を迎えるPLAZA。同店は、2024年2月にリブランディングを行い、日常の心拍数を上げる「ライフモチベートブランド」へのアップデートを行った。
「ライフモチベートブランド」の実現に向けて、様々な取り組みを計画しているという。その中の1つが、本セッションのテーマである「アジャイル型テストマーケティング」だ。
今回、PLAZAのアジャイル型テストマーケティングをデータの側面から支援したのは、リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営するunerryだ。同社は、網羅的な「人流ビッグデータ」を起点に、様々な生活者データを連携。多様なメディアでの統合的コミュニケーションを実現するエコシステムを構築している。
デジタルとリアルを融合させた「データエコシステム」は、国内外4.2億IDのGPS・ビーコンデータによる人流データと、テレビ視聴データ、購買データ、SNSデータなどをつなげ、ユーザー行動を深く理解できる仕組みだ。一枝氏はunerryの持つ「人流ビッグデータ」の分析方法について次のように説明する。
「店舗や映画館、公園など、リアルタイムにユーザーが訪れている場所をGPS・ビーコンデータから大量に判定しております。たとえば、平日に保育園に行って、ベビー服のお店にも行っている場合『これは子育て世代の可能性が高い』といった形で、行動から結びつく人々の特性を推計します。そのデータを、顧客理解だけではなく、広告・集客活動にも活用いただき、ニーズの高いセグメントを見出し、特性にあった情報をお伝えすることで良い顧客体験をもたらせます。さらに、店舗の来店者に向けた広告やマーケティングの事業開発を支援する『リテールメディアサービス』もunerryのサービスのひとつです」(一枝氏)
実際の売り場やリテールメディアを使った、テストマーケティング環境を構築
これらunerryのサービスを活用したのがPLAZAの事例だ。PLAZAの佐々木氏は、「アジャイル型テストマーケティング」に取り組んだ背景について語った。
「PLAZAとして、既にできあがった商品を探し、提供するだけではなく、商品に対する価値作りの過程、つまり価値自体を広げていく部分にも参画したいと考えていました。そのプロジェクトを『PLAZA AGILE COMMUNICATION LAB.』と名付けて、メーカーさんが愛情を込めて作り、世に送り出そうとする商品が持つ価値を、お客様に届けるためのお手伝いをさせていただこうと思っています」(佐々木氏)
「PLAZA AGILE COMMUNICATION LAB.」の主な活動は、PLAZAの店舗を活用し、実際の売り場やメディアを使いながら、顧客との接点改革や情報接触を支援することだ。そこから得られたデータはunerryによる分析がかけられ、次のマーケティングアクションにつながっていく。同ラボの活動の軸は大きく次の3つある。
このうち「PLAZA AGILE COMMUNICATION LAB.」のコアバリューと位置付ける「新価値創造支援」について佐々木氏は説明する。
「PLAZA ONLINE STORE含む、PLAZA店舗カテゴリー売り場を活用し、他社商品と並ぶ中でのテストセールス(試し売り)を行います。メーカーさんは実際のPLAZAの売り場やメディアを通じて商品やその情報を発信し、PLAZAの会員様に情報を届けてリアルな反応を見ることができます。他にも、会員様を中心にアンケートやインタビューを行い、商品についてのヒアリングも可能です。PLAZAが保有する様々なリソースを使いながらプランを立てていくため、メーカー様が持ち得ていない要素を使える点に大変好評いただいています」(佐々木氏)
人流ビッグデータ×顧客データで幅広いセグメントへリーチ
ここで活用されたのがunerryの「人流ビッグデータ」だ。同データを起点に、テストセールス期間中にその店舗周辺に来訪した人、過去にその店舗に来訪したことがある人に向けた情報発信を行う。これによりメーカーのみならず、PLAZAだけでは補えない層にもリーチできる。
PLAZAとしては、「人流データ」を組み合わせることで、商品の認知度向上(メンタルアベイラビリティ)とお客様への来店喚起(フィジカルアベイラビリティ)の双方からテストマーケティングを広く・多面的にできるという。
「PLAZA AGILE COMMUNICATION LAB.」の構想は、以前からPLAZA社内で持ち上がっていたが、どのような形で始めるべきかは議論となっていた。そこに、unerryの熊坂氏がメーカー勤務経験を生かした視点を提供し、上記のような形でスタートすることになったのだ。
「メーカーの商品開発担当者やブランドチームは、ローンチを迎えるまでにも、様々な調査や情報収集を行っています。しかしその時点では実際のマーケットに出してないので、不安な気持ちは常にあるのです。そこで、価値開発のプロセス、顧客コミュニケーション、実際の店頭販売はもちろん、それらの成果確認や顧客理解といった、メーカーが重視する一連のマーケティング活動をスモールスタートさせ、情報収集・分析を統合的にサポートしてくれるサービスがあったらいいのではないかと、PLAZAさんにお伝えしました」(熊坂氏)
PLAZAブランドを通して、生活者とファーストコンタクトを図る
熊坂氏はさらに、PLAZAならではの特長が、テストマーケティング環境の魅力になっていると語る。
「PLAZAさんは『面白そうなものを置いている』というイメージが、データ的にも他社と比べ優位になっていました。また、店舗立地ゆえに出せる集客力や来店客層などにも特徴が見られています」(熊坂氏)
結果“PLAZAブランド”の持つ様々な要素によって、メーカー好みのテストマーケティング環境になっているのだ。この環境に人流データを使うことで、コミュニケーションや効果計測をすることに熊坂氏は「大きな意味がある」と話した。
「PLAZA AGILE COMMUNICATION LAB.」の軸のひとつであるコミュニケーション・計測支援としては多様なメニューがそろう。サイネージプロモーションやコーナープロモーションなどで「リテールメディア」としての機能を提供している。
レジプロモーションを例に挙げると、レジ通過者へレシート広告を発行したりサンプルなどの告知物を配布したりすることは、一般的な施策ではある。PLAZAでは、その店舗に配荷されていない商品のプロモーションも可能だ。「PLAZA AGILE COMMUNICATION LAB.」のサービスには、レシート広告を渡す際にスタッフから顧客に簡易な声かけを行うメニューも含まれている。
マーケティング部門以外にも、寄与するデータが得られる
もう一つ、メーカーが強化したいポイントが「ブランド想起」だ。想起につながる施策として「ラストマイルプロモーション」もコミュニケーション・計測支援の一環で行っている。
具体的には、人流データを活用することで、店舗周辺に来た生活者、店舗に来店した顧客に対して商品への想起や興味喚起を促すようなプッシュ通知をスマートフォンに情報発信。それに対する消費者の実際の反応を計測していくのだ。
「たとえば店舗に来る前に閲覧した人が来店し、購入まで至ったのか、来店継続をしたのかなどのデータも計測できます。このように、メーカー様が欲しいアウトプットを『PLAZA AGILE COMMUNICATION LAB.』でしっかりと提供していくことが、PLAZAのテストマーケティングです」(佐々木氏)
また、PLAZAを運営するスタイリングライフ・ホールディングスがTBSグループであることを生かし、テレビCM連動型のテストマーケティングも展開可能だ。セグメント・エリア別に多様な施策を組み合わせて実施していく予定となっている。
もうひとつの軸「データ分析支援」では、来店者・来棚者・購入者の行動を分析。「マーケティング部門だけではなく、営業担当にとっても価値のある取り組みになる」と佐々木氏は話した。
手がつけられなかった、アジャイル型マーケティングに着手
アジャイル型のマーケティング、特にリアルの店舗を巻き込んだアジャイル型マーケティングの必要性は、以前から言われていたものの、なかなか手をつけられなかった領域だ。しかし、人流データを活用することで潮目が変わってきている。
PLAZAがメーカー様向けにテストマーケティング環境を用意し、unerryの持つ人流データを組み合わせたことで、アジャイル型マーケティングが始動した。佐々木氏は「PLAZA AGILE COMMUNICATION LAB.」について「商品の価値作りやコミュニケーション開発を進めるメーカー様のマーケティングチーム、営業チームなど多くの皆さんの価値になるものだ」と話した。
最後に一枝氏は「unerryは、企業やブランドのモノ作り・価値づくりに活用できるソリューションを提供している会社です。今回の話で気になることがありましたら、ぜひお問い合わせください」と話し、同セッションを締めくくった。
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