SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第114号(2025年6月 最終号)
特集「未来を創る、企業の挑戦」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

広告産業のパーパスを考える

なぜオールナイトニッポンはV字回復したのか。ラジオだけにある緩やかなコミュニティとコンテンツ戦略

 博報堂/SIXのクリエイティブディレクター藤平達之さんが、様々な立場・役割の方とのディスカッションを通して「広告会社の強み」や「これからの可能性」を見つけていく本連載。第4回は、ニッポン放送「オールナイトニッポン」統括プロデューサーの冨山雄一さん(現在はメディアプロデュース部副部長)をゲストにお迎えしました。若者からの支持を取り戻し、スポンサー数も過去最高を記録しているオールナイトニッポン。そのV字回復に、現代のコンテンツ戦略を学びます。

ラジオ業界の盛り上がりに学ぶ、現代のコンテンツ戦略

藤平:本日はよろしくお願いします。この連載では、色々な立場の方との対談から直接的・間接的に学びを得て、広告産業の存在意義、さらにその先にある広告会社の生存戦略を探しています。冨山さんが書かれた『今、ラジオ全盛期。』を拝読しまして、オールナイトニッポン、もっと言うとラジオ・オーディオコンテンツ領域の復権に、広告産業も学べるところがあるのではと思い、対談をリクエストさせていただきました。

 余談ですが、学生の頃、窓辺にラジオを置いて岡野昭仁さんのオールナイトニッポンを聴いていたので、本を読んでめちゃくちゃ懐かしい気持ちになりました。いまもオールナイトニッポンはradikoのタイムフリーでしばしば聴いてまして、昨年秋に横浜アリーナであった佐久間宣行さんの番組イベント「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)リスナー超感謝祭2024~新時代~」も行かせていただきました。

博報堂/SIX クリエイティブディレクター 藤平達之さん
博報堂/SIX クリエイティブディレクター 藤平達之さん

冨山:そうなんですか、ありがとうございます! 藤平さんが高校生の頃だと、ちょうど僕が『ポルノグラフィティ岡野昭仁のオールナイトニッポン』を担当していた頃かもしれないです、なんかエモいですね。

藤平:そうなんです、当時はなかなか電波が届かず(笑)。今日は本に書かれていない内容も含め、色んなお話を聞かせてください。

斜陽と言われていたラジオ、V字回復にあった3つの要因

藤平:さて、いきなり失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、本にも書かれていた通り、ラジオはV字の谷の部分があった認識です。振り返ると、その谷から転じ始めたタイミングはどのあたりでしたか?

冨山:これはここ最近の話ではなく、テレビが出てきた時から、ラジオは斜陽産業だと言われてきました。実際、ラジオの広告費は1991年がピークで、なだらかに下がり続けています。

 では何をもって「今、ラジオ全盛期」なのかとよく聞かれるのですが、僕は「ハード(聴取環境)」「ソフト(コンテンツ)」「広告」の3つの側面で説明するようにしています。オールナイトニッポンはありがたいことに3つともV字回復を遂げていますが、ラジオ業界全体で見ると「広告」がV字回復に転じているわけではないので、ここの認識はまず統一しておく必要があります。

ニッポン放送 コンテンツプロデュースルーム長 番組プロデューサー統括 冨山雄一さん
ニッポン放送 メディアプロデュース部 副部長 冨山雄一さん

藤平:なるほど。では、「オールナイトニッポンのV字回復」という括りで話を聞いていきたいと思います。

冨山:まず、ハード面に関しては、2010年にradikoが誕生し、2016年にタイムフリーでのサービスが始まりました。ラジオ受信機がなかなか家にない状態から、スマホでいつでもラジオを聴けるようになった。この差は非常に大きく、DXによりラジオはハード面が一気に整いました。

 ソフト面もこの20年でずいぶん変わっており、そもそも生放送を維持するのが厳しい……という時期がオールナイトニッポンにもあったんですよ。雰囲気が変わったのは、2016年に星野源さん、2017年に菅田将暉さんのオールナイトニッポンが始まったタイミングです。この頃から、ラジオ番組をコンテンツの1つとして捉えるように意識が変わったと思います。

 そうしてハード面が整い、コンテンツもリッチになると、リスナーがTwitter(現X)に番組の感想を書き込んでくれるようになりました。SNSにより、ラジオの居場所・存在感がネット上にも表れ始めたわけです。中には、番組スポンサーへの感謝をつぶやいてくれるリスナーも出てきて、ラジオ特有の「応援する文化」が見えるようになってくると、雪だるま式にスポンサーの数が増えていきました。

 月~土曜で10社くらいまで落ち込んでいたスポンサーが、2024年度では100社以上の企業の皆さんにご協賛いただいていますので、広告面も大きく回復できたと言えます。

 僕は「21世紀に入って、今、若者がいちばんラジオを聴いています」とキャッチコピーのように話しています。

 衰退していた2000年代、ラジオという文化は若者のなかでは廃れてしまっていて、リスナーは絶滅危惧種ぐらいに減っていました。それが今や、初めて会う仕事関係者やプライベートであった人、とりわけ若い人から「ラジオ聴いています」「××のオールナイトニッポン好きです」と言われる機会が増え、肌感覚ではありますが10倍どころか100倍ぐらい言われるようになった印象です。

『今、ラジオ全盛期』より引用

次のページ
ラジオ局間の競争から、プラットフォーム上での競争へ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
広告産業のパーパスを考える連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/07/15 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49382

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング