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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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統括編集長インタビュー

“機能性”から“体験向上”へ─ これからの企業向けサービスの競争優位

ユーザーの“仕事”を理解する

── どうすれば、そのようなユーザインターフェイスを作ることができるのでしょうか。

 ユーザーを理解することです。といっても、コンシューマー向けサービスの真似をするという意味ではありません。ユーザーの“仕事”を理解し、それをいかに効率的、効果的に達成させられるのかを追求します。くわえて、他業務、他チームとコラボレーションしやすいか、など業務の生産性向上を意識した設計が重要です。

 もちろん、それらの実現が可能なスタッフを揃えることも大切です。Domoにも他の会社で実績を残している優秀なデザイナーがおります。優秀なスタッフが揃うことで何が得られるのか。ゼロからスタートするよりもベストプラクティスを活かしたインターフェイス設計が可能となります。これは実装スピードという面で見ても大きな強みです。

ダッシュボードイメージ
Domoのダッシュボードイメージ

── どのような工程で作っていくのでしょうか。

 参考までにDomoのプロトタイプの作り方をお話しましょう。

 Domoのインターフェイスデザインはインタラクティブに行っています。昔は私自身もまず紙に書いていたのですが、ウェブサービスのインターフェイスはページ遷移の際にどのような体験を提供できるのかという点が重要です。ページ間を心地よく遷移できるのか、アクセスしたいページへ最短でたどりつくことができるのかなど「ページ間」をいかに快適に過ごせるのかが大切です。

 紙のようにインタラクティブに動かないものを使って設計していくと、結局、机の上で理詰めで考えた結果のインターフェイスになってしまいます。机の上で考えている分にはそれが最適な解だと思ってしまいがちなのですが、画面上で実際に動かしてみると「ぱっと使って気持ちいいかどうか」がすぐに判断できます。

 つまり、最初からインタラクティブな環境で設計していくと、感情面の判断もユーザインターフェイスに組み込んでいけるのです。その工程を含めるかどうかで、仕上がりは大きく変わります。

 また、Domoではモバイルファーストでプロトタイプを作ります。例えモバイル版のリリースが後からだったとしても、モバイルファーストで作ります。

 モバイルファーストで作る意味は、スマートフォン時代を念頭に置いてという点もありますが、何よりPCに比べ制約がある中でユーザインターフェイスを設計していくので、無駄を削ぎ落したよりシンプルなユーザインターフェイスにできるという利点があるからです。制約がある中で工夫し、洗練されたデザインにすることがプロダクトデザインの本質なのです。

 プロダクトをローンチしたばかりの現状は、自分たちの仮説に対する反応を観察している段階です。一定期間観察し、仮説があっているかどうかを判断し、次のアップデートに備えるというサイクルを回していきます。この繰り返しがよいユーザー体験を作ることにつながっていくのです。

── 徹底していますね。

 Domoの企業文化として、CEOのジャシュ・ジェイムズ自身がユーザー体験を最重要視しています。よいデザイン、良質なユーザー体験はトップの意思決定がなければ実現できません。なぜならその領域をしっかりやるのは、非常に大変な作業であり負荷も大きいからです。

 最初からユーザー体験を最重要視する意思決定がないと、もともとの目的とはかけ離れた機能がドンドン追加されてしまい、結果的に当初想定していたユーザー体験の実現が難しくなってしまいます。

 自分たちはユーザーに対してどのような価値を提供したいのか、何を優先すべきなのかというフィロソフィーを会社全体で共有し進めていくことが大切なのです。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/05/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/22399

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