マルケトのMAを通じて、MAのコンセプトを理解する
話は変わり、福田氏は業種やビジネスモデルによる細かな違いが出てくるという前提を踏まえながら、顧客一人ひとりに最適な情報を、最適なチャネルで提供するMAの仕組みを解説した。
同社ではまず顧客の状態を、「匿名」「見込み客」「顧客」「ロイヤル顧客」と分類。さらに分類した顧客に合ったアプローチを進め、顧客の行動データを収集する。
「MAと聞くとオンライン限定の施策と考える方がいますが、DMやコールセンター、営業、店舗といったオフライン接点の情報も集約していきます。そうすることで、顧客のライフサイクルをデータで把握することができます。
顧客の属性、行動、頻度という3要素を掛け合わせたセグメンテーションができれば、顧客のLTV(Life Time Value)に寄り添うことができる。これがMAによるエンゲージメントマーケティングの一例です」(福田氏)
売上、生産性両面の向上を実現する
次に福田氏は、MAが提供できる3つの価値を挙げた。
1.新規顧客獲得
2.顧客LTV最大化
3.マーケティングROIの向上
新規顧客獲得では下記図にある、イベントを活用した見込み顧客獲得から、ホットリードの営業への送客までという「5つのマーケティングシナリオ」を用意。そのシナリオにあった施策をMAで最適化することにより、リードや受注件数を拡大する。
セッション内では、上記の考え方をベースに成果を出した、新車および中古車の販売会社であるIDOM(旧ガリバーインターナショナル)の事例を引き合いに、わかりやすく解説。IDOMは、MAを通じてシナリオを実行して後追いメールの配信施策を実施し、成約率が約2倍にアップしたという。
良い成果につながった要因は、検討前期と検討後期で消費者のインサイトを分析した点にある。特に、検討後期にあたる実車確認から購入までの1カ月、つまり購入へのモチベーションが高い時期に後追いでメールマガジンを配信して、成約に向けたインサイトを促進。大きな成果へと結びつけた。
顧客LTVの最大化については、会員向けサービスを提供する企業がわかりやすい例となる。無料登録から有料登録に切り替えるタイミングや、クレジットカード番号などのセンシティブ情報を登録するといったフェーズは壁になりやすい。利用しなくなってしまった休眠顧客への対応も必要になる。
そこで、登録したばかりのユーザー向けに会員サービスの活用支援をするコンテンツや、無料会員には有料会員になるメリットを説明したコンテンツを用意。一定期間サービスを利用していない会員に対しては、メールやチャットサービスでフォローを続けたり、コールセンターや内勤営業部隊との連携で顧客サポートをはかったりすることで、顧客離れや会員退会を食い止め、ロイヤル顧客化への軌道に乗せていく。
マーケティングROIの向上については、MAはマーケターが使いやすい、操作しやすいという観点で作られていることを示している。つまり、マーケターが顧客のことを専念して考えられる環境を提供できることで「生産性の向上」につながっているということだ。