A1.精緻なターゲティングでアプローチすること
有園:なるほど。それは、そもそも個人にフォーカスしていない「世帯視聴率」をテレビ局が採用している以上、ニーズと環境が永遠にマッチしませんね。いわゆる個人別の視聴は、他の調査会社からは出てくるかもしれませんが、テレビ局から公にはしないでしょう。一方で、プログラマティックTVはデモグラフィックやサイコグラフィックの属性を使ってターゲティングしていくので、世帯視聴率の数値だけではどうにも使えない。

小出:そうなんです。もっというと、資生堂ジャパンではブランドごとのマーケティングを展開しており、各ブランドで年代をはじめとしてかなりターゲットを絞っているんですね。ご指摘のようにテレビ局やビデオリサーチなどからはターゲット属性別の視聴率は一般的には発表されていないので、たとえば20代女性はどんな番組を見ているのか、独自に調べていました。
すると、視聴率15%前後をとっているバラエティやドラマなどは、大体オールターゲットで全年代と男女が均等に含まれると明確にわかってきました。20代女性が総視聴者に占める割合は約10%なので、ターゲット視聴率は1.5%になります。
有園:そうなんですね。先日、テレビ視聴の状況が詳細にわかるサービス「SMART」を御社が活用しているという記事を、SMARTを提供するスイッチ・メディア・ラボのサイトで読みました。現状では、化粧品の高関心層かどうかといった細かい属性を、SMARTで見ているんですか?
小出:そうですね。ただ、それは根本解決にはなりません。ネットでは可能な広告の出し分けがテレビでできない以上、広告費の90%を捨てている中で、ターゲットが少しでも多く含まれるのはどちらの番組かを見ているレベルに留まりますから。
有園:つまり、根本解決とは、テレビCMの出し分けということですね。
小出:ええ。理想はターゲットのみに配信したいですが、画面の向こうにいるのが男性なら当社においてもメンズ化粧品の広告が流れるという男女の出し分けだけでも、広告費の半分を有効活用できます。デジタルで行われているターゲティングに近いことがテレビでできれば無駄がない、というのが、やはり最終結論ですね。デジタルも、閲覧サイトなどからのターゲットの類推などを含むとブレもあると思いますが、響く人が約10%しかいないという状況と比べると大きな違いです。