企業のデータ活用における課題
田村篤司(以下、田村):ビッグデータはマーケティングにイノベーションを起こすと言われていますが、企業のデータ活用はまだまだ発展途上と言えます。
加治慶光(以下、加治):これだけ活用し得るデータがあふれているのに、思うような成果が上がらないと感じている企業は多いですね。
田村:本来なら、ビッグデータを元に生活者像やそのニーズが精緻にわかり、個々に適したコミュニケーションを図れるはずですし、それこそがマーケターが期待していることですが、実際にはデータの量があっても、それらのデータがそれぞれ断片的なことが多く、むしろ生活者の実像が見えなくなっているという問題が起きています。生活者の行動は多様化・複雑化する一方で、行動データがつながっていないので、生活者のカスタマージャーニーが描きづらくなり、購買の意志決定プロセスの理解できない部分、すなわちブラックボックスが増えています。
伴果純(以下、伴):また、企業の発信する情報への信頼も薄れています。一つの原因は、企業側と生活者側、それぞれが得られる情報量に差がなく、ややもすると生活者のほうが情報へのアクセス方法や情報の選別力に長けてしまい、企業側が生活者に対して情報優位性を持てなくなっていることです。
加治:いずれも同感です。加えて、企業にとっては現代のデータ四強といわれる「GAFA(ガーファー:Google、Apple、Facebook、Amazon)」とどう対峙するかも大きな壁になっている。2007年、企業の時価総額トップ10は主に石油会社が占めていましたが、2017年ではそれは様変わりし、この4社とアリババとテンセントが世界で膨大な情報を独占的に握るようになりました。
田村:生活者に関するデータは膨大に生成されるのだけど、ガーファーに独占されがちになっている。さらに、多くのマーケターにとっては生活者行動のブラックボックスが増え、生活者に対して情報優位性もないということで、厳しい環境になってきました。
加治:そんな中で、ガーファーと比較される存在でもある楽天。その一員の楽天インサイトはどのような立ち位置にあるのですか?
田村:そうですね、我々は情報を独占して企業と対峙するというのではなく、クライアント企業のマーケティングをデータ活用の観点からも支援していくことが本懐です。先ほど挙がった課題の解決を含め、クライアント企業を支援することを通じて、生活者と企業の間で本当に意味があるマーケティング活動が行われ、よりよい社会が築かれてゆくよう貢献したいと考えています。