家族とコネクテッドカーでドライブしている最中に……

IoT広告において、なぜ今のネット広告のモデルが通用しなくなるのか。もちろん、GDPRの影響が大きいのは明らかだ。しかし、それだけではない。
IoT広告の利用シーンを考慮すると、今のターゲティング技術だけでは不適切な広告を配信してしまう可能性が高く、その結果トラブルになると言われている。そのため今のネット広告モデルを根本的に変更する必要がある。まずは、簡単な例をもって説明しよう。
あなたが男性なら、エッチな動画を閲覧した経験があるだろう。ネット広告の仕組みは、あなたの閲覧履歴をトラッキングし、広告配信に応用している。
仮に、あなたが妻と娘たちと一緒に東名高速を走っているとしよう。最新の自動運転車(コネクテッドカー)に乗り、車内に設置されたディスプレイで、家族と一緒に5G回線でテレビ番組を楽しんでいる。そのとき突然、ちょっとエッチなCMが配信されたとしたらどう思うか? 家族の手前、慌ててしまうに違いない。
既存のネット広告技術では、閲覧履歴に基づいて家族と一緒の時に、不適切な広告配信をしてしまうかもしれない。今のネット広告は、パソコンやスマホを「一人で見ている時」の配信を主に想定している。しかしIoT広告には、家族など「複数人の利用も」含まれる。今のままでは不適切表示が懸念され、サービス化できない。
エッチなコンテンツだけならわかりやすいが、事はそう簡単ではない。
たとえば、私は、妻に内緒で投資用のマンションを購入し、その後にバレた経験がある。そうすると、投資用物件をネットで見て回った翌日に、妻と一緒に自動運転車(コネクテッドカー)に乗って遊びに行くのは怖いのだ。自動運転車のディスプレイに、「今お探しの条件にピッタリの物件です!」とか広告が出てしまったら、「あれ、まさか、また内緒で買うつもりなの?」と、妻から怒られてしまう。
あるいは、最近は、電通・博報堂からGoogleやFacebookなどに転職する人も増えたが、電通の社員がIT企業への転職を考えながらブラウザを使った翌日に、コネクテッドタクシーに上司と一緒に乗るのは嫌だろう。
その時は、「頼む、転職の広告は出さないでくれ」と祈るかもしれない。広告で「あなたがお探しのGoogleが広告マネージャーを募集中!」とか、上司と一緒の時は「勘弁してくれ」って感じだろう。
もうお分かりだろう。株式会社マイデータ・インテリジェンスの言う通り、「パーソナルデータとは生活者個人に帰属するものであり、それを企業活動に活用するには生活者からの許諾が必要」なのだ。IoT広告で、勝手に広告配信やマーケティングに利用されては困る。
しかもスマートスピーカーは、あなたの家庭内の音を拾っている可能性もある。知人のエンジニアの話では、家庭内の会話をすべて「盗聴している」状態に近いらしい。それをあなたの許諾なしに、広告配信に使われても、構わないだろうか。
