ECでなくてもレコメンデーションが役立つ理由
AIによるレコメンデーションは「顧客の行動を観測・分析し、次に買う確率が高い商品を推測する」ということで、成果や目的が非常にわかりやすい。その一方で、「物販系EC以外では使えないのでは」と言われることも確かだ。
園田氏は、「レコメンデーションは手段と目的が明確だからこそ、応用が利きやすく、あらゆる業種業態で成果を出すことができます」と説明する。
たとえばシルバーエッグ・テクノロジーの導入事例でいえば、人材紹介や不動産事業などでも広く活用されているという。ファッションや消耗品のようなコモディティ商品ではないが、「その人にマッチしている物件」を高精度で提示することで、成果を上げているそうだ。
ユニークなところでは、個人の様々なスキルを売買するサービス「タイムチケット」の導入事例がある。特定のスキルを持つ人を探していると、そのスキルを持つ人を自動的に抽出・提示するように精度も進化していくという。レコメンドのあり・なしを比較すると、成約率は283%向上、成約金額も121%向上したという。
またオフィス向け家具の販売を営む「オフィスコム」でも、レコメンデーションは活躍している。この企業では膨大な点数のオフィス家具を提供しているが、これまで一緒に購入されたログを分析して、最適な椅子と机の組み合わせを抽出し、サイトに提示することで購入点数は2倍以上増加、売り上げも1.7倍に増えた。
洗練されたAI技術だからこそ活用の幅は無限大
シルバーエッグ・テクノロジーでは、自社開発してきたレコメンデーションの仕組みを使った新たなパーソナライズド・マーケティングツールの提供にも取り組んでいる。
これまでのレコメンデーションが「サイトを訪問した人に対し、購入しそうな商品を提示する」というインバウンド型だったとすれば、見込み顧客の検出はその逆転の発想で、「特定の商品を買いそうな人を抽出し、その集団を対象に様々な告知や施策を打つ」ことができるアウトバウンド型ソリューションとなる。
実は「特定の商品を買いそうな人を抽出する」というアルゴリズムは、これまで計算に時間がかかっていたが、同社のノウハウを結集することで、その課題を解決したそうだ。こうして「買いそうな人」が抽出できれば、広告やメッセージの出し分けが可能になり、広告費やマーケティングコストを効率良く投資することができる。それを実現するのが、シルバーエッグ・テクノロジーの見込み顧客抽出ツール「プロスペクター」だ。ECだけでなく、実店舗においても、「自店舗のポイントカード会員データを使い、在庫中の商品を買いそうな顧客を見つけ出す」といった施策が打てるため、用途は広い。一般的なレコメンデーションに比べ、「これを売りたい」というマーケターの戦略を叶えやすいということもメリットだ。
レコメンデーションと一口にいっても、その組み合わせ方によってできることは広範囲にわたる。園田氏は「大切なことは、それを見極め、売り上げに貢献できるサービスを作っていくことなのです」と語り、講演を締めくくった。