ニューリテールのために企業が考えるべきこと
MZ:昨今オフラインとオンラインが融合したニューリテールという概念も重要視されています。
渡辺:これまでは店舗が“主”でECサイトが“副”の存在と考えられ、オンラインから店舗へ送客するO2Oのような戦略もとられてきました。しかしいまや消費者にとって、店舗やECサイトの境界線はなくなりつつあります。
多くの企業では、たとえば自社EC担当、Amazonや楽天などのモール担当、リアル店舗担当というように、チャネルごとに専任の担当者を置いています。そしてチャネル毎にささげ業務や商品情報管理もバラバラなケースが多いと聞きます。運営体制という観点でも、そうしたチャネル毎の担当という概念は古くなっていきます。私たちのニューリテールに対する定義は、繰り返しになりますがチャネル横断的に文脈のある商品体験を提供することです。
MZ:PIMで商品情報を一元管理するようになると、リテールにおけるマーケティングはどのように変わるのでしょうか。
渡辺:マーケティングプロセスに加えて商品情報のPDCAを回せるようになります。せっかくマーケティングオートメーションやレコメンデーションエンジンを導入しても、載せていくコンテンツが台無しにしているケースが目立ちます。マーケティングプロセスと商品情報は両輪なのです。プロセスの最適化に加えて商品情報も最適化していくことで、ROMIは最大化します。
また、ブランド価値の向上にも大いに役立ちます。別々の担当者がチャネルごとに情報管理・最適化を行い、バラバラなコンテンツを提供していると、メッセージに差異が出てブランドが毀損してしまう恐れがあります。文脈のある一貫したコンテンツは、ブランドマネジメントの大切な要素です。
カスタマーセントリックな商品情報管理
MZ:Contentservのソリューションでは、具体的にどういったことか実現できるのでしょうか?
渡辺:機能的には、すべての商品情報と関連する画像などのデジタルアセットを一元管理し、ECやモールなどの顧客接点に自動配信していくことができます。また、商品情報の作成プロセスをワークフローで管理することにより、承認プロセスやデータ品質を担保することも可能です。もちろん、誰が、いつ、どこを更新したのかといった履歴情報も保持され、必要に応じて以前のバージョンに戻すこともできます。ここまでの機能をPIM、DAMと呼んでいます。
そして、さらに文脈的な商品体験を提供するためのフレームワークを私たちはMxMと呼んでいます。MxMは、ペルソナやカスタマージャーニーに合わせて商品自体や商品情報、表現を最適化していこうという概念です。たとえば、ビールを欲している顧客が、「辛口のビール」と「ドライなビール」のどちらのコピーが心地よいのかまで管理します。
これまでの商品情報管理の基本的な考え方は、商品コードを親として、サイズや価格といった情報を子属性として紐づけるものです。もちろん販売管理や物流の世界ではこのような商品コード(SKU)を中心とした管理体系は、これからも残るでしょう。一方で、マーケティングにおける商品情報管理では、まず顧客やペルソナがいて、興味のある商品が紐付き、そして心を惹く商品情報が添えられるという、カスタマーセントリックな商品情報管理も併せて普及していくと考えます。