画像のトーンはそろえる?そろえない?
――個々のコンテンツ制作に関しては、どのような工夫をされているのでしょうか。
齊藤:若年層は特にInstagram上ではビジュアルを中心に見ていて、長いテキストを読むことはないのではと思っています。松屋さんを例にしますと、投稿文は1、2行で簡潔にまとめることを心がけています。
画像は、人物や物撮りの写真、イラストなど様々な種類を用意しています。これまでInstagramのセオリーとして、ホーム画面のファーストビューに入る3枚×3枚の画像は、トーンをそろえることが良いとされていましたよね。でも松屋のアカウントでは、すべて異なるトーンのほうが効くと考えました。若い人たちがスマートフォンを見るスピードはものすごく速いため、似たような画像ばかりだと、スクロールする指を止めてフォローするまで動かすことはできないからです。
――意外性がないと思われてしまうと、若年の利用者は見るのをやめてしまうということでしょうか。
齊藤:商材にもよりますが、その傾向はあります。結婚式場のサービスを展開しているアカウントで、結婚に関心ある人に届けたい場合は、提供するサービスの世界観が伝わるキラキラな画像が並んでいたほうが効く場合もあります。一方で、今回のようにそもそも関心の低い層にブランド認知を広げるには、「なんだろう?」と思わせて、過去のコンテンツも見に来てもらう仕掛けも必要なんです。
ですから松屋さんの投稿では、画像の1枚1枚にインパクトを持たせて勝負しています。ほかには、若年女性が好みそうなおしゃれな写真やイラストに商品や店舗の画像を紛れ込ませることで、「おもしろい」「もっと見てみたい」と感じてもらうことを狙っています。
親しみやすさ×レベルの高さを両立させる
――2019年はストーリーズも盛り上がり、多くの企業が活用している様子も見られました。
齊藤:私が運用支援をしているどのアカウントでも、ストーリーズ活用は推進しています。全般的に、ストーリーズは作り込んだ動画よりも、カジュアルであまり手の込んでいない投稿が好まれる印象はありますね。ただ、企業アカウントが作り込みを単純にやめるべきかというと、少し違うのではないかと思っています。
InstagramをはじめとしたSNSでは、企業も一般の人のアカウントも同じ位置にいます。一般の人の投稿内容になじみすぎてしまわないよう、ちょっとマネできない質でコンテンツ提供することの重要性は変わっていないのです。そういった意味で、コンテンツ制作においてInstagramの特性をよく理解しているクリエイターの力を借りることも有効です。
松屋さんの投稿では、ファッション業界のインフルエンサーやプロの写真家などを起用しながら、親しみがあるコンテンツなのに、真剣に作っていてレベルが高いといったアンバランスさが注目を集めたポイントだと思っています。