顧客のリアルを明らかにする、オープンハウス流のマーケティング
オープンハウスは、まず5月に、コロナ禍を受けた住宅意識調査を実施。そして6月上旬には、「2020年 コロナ禍を受けたこれからの住まい意識・実態・ニーズ調査」を発表した。
調査から分かったトピックは、大きく3つ。まず1つ目は、都心・駅近のニーズに変化はないこと。また、約3割の人が以前より都心に住みたいと回答しているそうだ。
2つ目のトピックは、在宅時間が増加し、住環境を整えたいと考えている人が多いこと。そして3つ目は、新しい生活様式により、レイアウトや設備の自由度が高い戸建てが注目されていることだ。仕事や勉強の場所、キッチン設備、屋上や庭、バルコニーなどのフリースペース、防音設備など多様なニーズが分かった。
「調査からは、郊外に対するイメージの違いが見えました。山手線の駅まで30分から1時間くらいで出られる場所を、全員ではないですが、郊外と捉えていらっしゃる方が多いです。また、あえて満員電車を避けて自転車通勤ができるエリアも人気です」(加藤氏)
また「広い住宅に住みたいから引っ越す」は、簡単なことではない。職場や学校、日々の暮らしが大きく変わる決断は難しい。「必ずしも、一部のメディアで話題となっていた、“県を跨ぐ移住を希望する人”ばかりではない」というのが、同社の見解だ。「“いち早く調査して、自らが情報発信する”。これが、オープンハウス流のスピード重視マーケティングです」と加藤氏は主張した。
広報と宣伝部の一体化で、スピーディーな意思決定を実現
この、スピード重視マーケティングを実現しているのは、広報部と宣伝部が一体化している組織体制にある。加藤氏がマネジメントする広報宣伝部は、同氏を含めて5人のメンバーが所属し、メディア対応やSNSの運用、コンテンツ制作までを担当する。
「会社のオフィシャルな情報を発信する広報に、間違いは許されません。一方、宣伝部は利益を追いますから、広報と宣伝は利益相反なところがあるかもしれません。しかし、1つの部署として動くことで、とにかく意思決定が早いメリットがあるのです」

その事例の1つとして挙げられたのが、「小学生対象!春休み絵画コンテスト」だ。休校中の児童へ向けて、社会貢献の立場から、「将来の夢」をテーマにした絵画コンテストを実施した。「少しでもおうち時間を楽しく過ごしてほしい」「今だからこそ、将来の夢について考えて、家族で語り合ってほしい」の思いを込めてスタートしたコンテストは、全国から1,101点の作品の応募があったという。3月5日に企画を立ち上げ、約3週間後の3月23日にローンチと、スピーディーな進行に驚きだ。
「通常の春休みのスタートに間に合わせたいと考え、関係各所の皆さまに協力いただきました。意志の強さや意思決定のスピードがあったからこそ」と加藤氏は振り返る。
