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「withファン」レポート

バルクオムに学ぶ、D2C時代のマーケティング 利用継続を実現するCRMとは?

 アジャイルメディア・ネットワークは、同社が提唱するアンバサダープログラムの一貫として、ファンと企業の関係に主軸を置いたオンラインセミナー「withファン」を主催している。2020年11月18日に行われた回では、バルクオムの高橋文人氏をゲストに、同社が利用継続を促すために実施する「CRM改善ノウハウ」が語られた。本稿では、その様子をお届けする。

男性向け基礎化粧品で世界シェアNo.1を目指す

徳力:本日は、メンズスキンケアブランド「バルクオム」の国内領域におけるマーケティングを統括されている高橋さんをゲストにお招きしました。バルクオムは木村拓哉さんのテレビCMでご存知の方も多いのではないでしょうか。

 この「Withファン」というイベントでは、ファンコミュニケーションに関する取り組みをゲストの皆さんにお伺いすることが多いのですが、今回はD2C(Direct to Consumer)の文脈において、お話を伺っていきたいと思います。まず、改めてバルクオムについて教えていただけますか?

高橋:バルクオムは、2013年に事業を開始したメンズスキンケアブランドです。男性をターゲットに、フェイスケア、ボディケア、ヘアケアといった基礎化粧品を販売しています。販売方法は「直販による定期購入」が基本で、「世界のメンズビューティをアップデートする」というビジョンのもと、グローバルシェア世界一をミッションに掲げ拡大を続けています。

 定期購入モデルのスタートは2015年で、2017年になると日本でも「D2C」「サブスクリプション」といった言葉がとても盛り上がってきたと記憶しておりますので、その時流にうまくのった面はあると思います。その頃からさらに多くの認知を広げるために、有名人の起用もはじめ、2018年には窪塚洋介さん、2019年にはキリアン・エムバペ選手を起用。そして2020年には木村拓哉さんを起用したテレビCMを開始しました。

徳力:現在は、オンライン直販以外にも取り扱いルートがあるのですよね?

高橋:はい。段々と入り口を広げています。以前はオンラインでのダイレクトマーケティング中心でしたが、西口一希氏の『顧客起点マーケティング』(翔泳社刊)の顧客(N1)分析を読み、それを徹底的に実践していった結果が、テレビCMの出稿に繋がったり、販路の拡大に繋がったりしています。現在はAmazon、楽天、ヤフーでも購入できますし、2020年秋には大手ドラッグストア1,371店舗での取り扱いもはじまり、マスの売上・シェアを拡大することが、今はひとつの方針となっています

利用継続を実現する、CRM改善

徳力:直販を基本としつつ、販路を拡大していっているのですね。直販・定期購入というD2Cモデルでビジネスをスケールさせていくために、どういったことに取り組まれてきたのでしょうか?

高橋:ブランド立ち上げ初期は、SNSをベースに、UGCやクチコミによって認知・シェアを拡大させていったのですが、今回は「利用継続を実現するためのCRM改善」について、お話ししたいと思います。まず、弊社ではCRM業務を大きく、以下の3つに分けています。

●LTV(Life Time Value)向上……顧客一人あたりの利益をどれだけ上げていけるかの取り組み。
●CS(Customer Support)対応……コールセンターなどの問い合わせ対応を向上する業務。
●LS(Logistics)対応……ロジスティクスの運用改善。

高橋:この3つをお客様の継続利用に大きく影響を与える要素としてとらえ、ダイレクトに届くところとそうでないところの両面から改善施策を実行しています。

 まずCS改善について。コロナ禍において、弊社ではオンラインの受注がかなり伸びたというプラスの出来事がありました。外出自粛によってオンラインメディアに触れる時間が増え、時間があってもお金の使い道がないため、「自分磨きでもしようか」と文脈があったのではないかと考えています。

 しかし、続いてマイナスの要素が出ました。外出自粛要請のため、コールセンターへオペレーターが出社できなくなり、応答率が通常よりもかなり落ち込んでしまったのです。電話が繋がらないと、新規のお客様に「怪しい企業だ」と思われても仕方がありません。リソースが逼迫したことにより、他の業務にも負の影響が連鎖し、入力ミスによる発送エラーなども増え、早急に改善していくべき点となりました。

 そこで、可能なことは極力自動化しようと考え、Zeals(ジールス)というLINEベースのチャットコマースを導入。FAQページからの問い合わせをLINE@に遷移させることで、発送の変更や荷物の問い合わせなどをチャットで行えるようにしました

高橋:これにより、多くの問い合わせをLINEで無人対応できるようになり、コアな業務にコールセンターの人員が割けるようになりました。弊社のコールセンターの場合、定期購入キャンセル希望への対応が一番重要です。ここで押し売りにならないのは大前提ですが、お客様に継続利用の提案を差し上げてなるべく解約を下げるには、有人での対応が重要なのです。

 また、LINE@からはクロスセル、アップセルを促すメッセージも多少プッシュで試み、獲得、売上増加などのLTVの改善にも繋がりました。

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この記事の著者

吉田 朗子(ヨシダ サエコ)

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 マーケティング部

広告代理店とカナダでのワーキングホリデーを経て、2018年アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)入社。AMNでは、マーケティング部に所属しながら”寄り添う企業として”をスローガンにしウェビナー、イベントなどを開催中。個人では保護犬のボランティアなどを行いながらより良い未来を模索している。

アンバサダープログラム事業部:https://agilemedia.jp/ambassador-program

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

宮崎 綾子(ミヤザキ アヤコ)

編集者。編集プロダクション勤務を経て2009年に独立、“ひとり編プロ”アマルゴンを運営。PC・スマホ・ウェブ関連の技術&カルチャー書籍編集制作を中心に、PRコンテンツ企画など幅広く関わる。電子書籍の導入期にはImpress QuickBooksシリーズに参画。実績は https://amargon.net

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田口 和裕(タグチ カズヒロ)

タイ在住のフリーライター。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイトなどを中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。著書に『できるfit メルカリ&LINE&Instagram&Facebook&Twitter 基本+活用ワザ』(インプレス・共著)、『ゼロからはじめるテレワーク実践ガイド ツールとアイデアで実現する「どこでも仕事」...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/12 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35365

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