ネット広告の成長をドライブする3要素
今後もデジタルメディアの接触時間が増えるのであれば、インターネット広告の動向は把握しておく必要がある。2019年のインターネット広告費がテレビ広告費を超えたという発表があったが(電通『2019年日本の広告費』)、成長をドライブしている要素は主にモバイル・動画・ソーシャルに集約される。
D2C、サイバー・コミュニケーションズ、電通、電通デジタルが発表した『2019年日本の広告費インターネット広告媒体費詳細分析』によると、インターネット広告費からインターネット広告制作費と物販系ECプラットフォーム広告費を除いた「インターネット広告媒体費」は前年比14.8%増の1兆6,630億円。そのうちビデオ(動画)広告費は前年比57.1%増の3,184億円と大きく成長し、19.1%を占めている(図表2)。
ソーシャル広告も前年比26.0%増の4,899億円に成長、全体に占める割合は29.5%に(図表3-1)。その内訳を見ると、SNS系が2,280億円(46.5%)、動画共有系が1,139億円(23.2%)となっている(図表3-2)。
動画広告の比率は高まる一方で、FacebookやInstagram、さらにTwitterでは多くの広告が動画で配信されており、TikTokではほぼ100%が動画である。
また、2019年3月発表の『2018年日本の広告費インターネット広告媒体費詳細分析』では、「インターネット広告媒体費」をデバイス別で見ると、モバイル広告費が全体の70.3%(1兆181億円)に上り、モバイルのみではじめて1兆円の大台を突破している。
購買チャネルとしてのソーシャルメディアの存在感
多くの企業が施策をデジタルやオンラインにシフトする中、プラットフォーマーが進めてきたサービス開発により、ソーシャルメディアは商品やサービスの露出、認知拡大、エンゲージメントの獲得、UGCの創出といった従来の役割が拡大するだけでなく、購買に直結するチャネルとしても機能するようになった。
プラットフォーム上で決済が可能な「チェックアウト」機能を米国で提供しているInstagramがよい例である。Instagramのショッピング機能では、そのアイテムを見て「いいな」と思ったらタップするだけで他の商品写真を閲覧できる。さらに、チェックアウト機能を使えば、外部のECサイトに遷移することなく、Instagram内で決済し、そのままアイテムを購入することもできるようになったのである。Instagramを始めとするソーシャルメディアは今や認知から購買に至るマーケティングファネルのほとんどをカバーしているが、それはプラットフォーマーが人々の欲求を刺激し増幅させることに長けているからだと言えるだろう。
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