※本記事は、2024年8月刊行の『MarkeZine』(雑誌)104号に掲載したものです
社会価値創出につながる事業推進の在り方とは?
─ 自社の資産を“人材”と定義しアクセンチュアが注力する企業市民活動 事業成長と両輪にする仕組みを聞く
─ LIFULL HOME'S「FRIENDLY DOOR」に学ぶ、社会課題を事業に落とし込むヒント
─ ユーザー・小売・メーカー、誰にとっても便利なリユースを目指すLoopに聞くパートナーシップの重要性
─ 社会課題への関心が高いリスナーに自然な文脈で自社の活動を届ける J-WAVEの番組スポンサード
─ 単純なSDGs訴求で生活者は動かない、CSV視点で考える「届く情報発信」
─ 「パーパス買い」はある?博報堂買物研究所が解説する生活者の購買意識(本記事)
パーパスが購買の決定打になるケースはまだ少ない
――近年、パーパスへの注目が高まり、これに関する広告や情報発信を見かける機会が増えています。こうした企業の取り組みや情報発信は、生活者の購買意識にどのくらい変化をもたらしていますか?
先に結論からお話しすると、「パーパス買い」という消費行動はまだほとんど起こっていないというのが現状です。
博報堂買物研究所では、「世の中や、人々の生活によい影響をもたらしているブランドや企業の姿勢に惹かれて商品を購入すること」をパーパス買いの定義としており、直近1年間でパーパス買いをした人の割合を調査※1したことがあります。このときの結果によると、パーパス買いの経験があると回答した人はわずか13%。また、別の調査※2で商品カテゴリー別に見ても、おおよそのカテゴリーでパーパス買いの経験者は1割未満でした。
この結果から、パーパス買いは、まだまだ生活者に浸透していないと言えます。
ただ、まったく変化が起きていないというわけでもありません。変化の兆しはたしかに見えています。
たとえば、我々は2007年から「買物欲」という概念を提唱しています。これは、「いいモノを手に入れたい」という欲求=物欲とは異なり、「いい買い物体験をしたい」という買い物プロセスに対する欲求を表すものです。この買物欲を刺激する“ツボ”も継続的に研究しており、2024年4月に発表した最新の買物欲のツボには、「利他・社会性」というものが登場しました。これに類するようなツボはこれまでなく、新たに出てきた形です。
――現在、パーパス買いをする傾向にある人には、どのような特徴がありますか?
まず年代に関しては、男女ともに10代と60代がパーパス買いをする傾向が高くなっています。あくまで推測ですが、買物研究所が行っている節約に関する調査の結果も踏まえると、その他の年代は利他・社会性に配慮して購買するほどの余裕がなく、価格を優先して選びがちなのかもしれません。10代・60代の方々のほうが、利他・社会性に反応する余裕があるのでは、と思っています。
その他、定性的な特徴に関しては、次のような特徴が見られました。
- お出かけやショッピングが好き
- 環境意識が高く、環境配慮の行動にも積極的
- 情報は誰よりも早く収集し、周りにも広める
- 仲間の輪の中心にいたいタイプ