LINEを中心に据えた、アサヒビールと電通の取り組みの全貌とは
安成:アサヒビールのプロジェクトは、どのように進めたのですか。
平嶋:「データマーケティングのLINE活用」「データ基盤の整備」「運用型販促」という3つのフェーズで進んでいます。まずはデータ規模を大きくする取り組みに集中し、その後、LTVを高める施策を検討していきました。
安成:はじめの「データマーケティングのLINE活用」のフェーズについて、LINEをデータ基盤に活用したのはなぜでしょうか。
佐野:アサヒビール社は以前から、1億近いユーザー数を抱えるLINEを活用した先進的な取り組みをしていました。LINEのユーザーIDでデータを収集(※)し、CDP(Customer Data Platform)に蓄積しています。
そのデータを活用する段階で、dentsu Japanをデータパートナーとして選定いただき、アサヒビール社のCDPとLINEのデータを活用し、マーケティング戦略を最適化するための「LINE DATA SOLUTION」を利用した、データ基盤の構築を進めていきました。
安成:「データ基盤の整備」のフェーズはどう進めましたか。
平嶋:すべてのキャンペーン施策が、LINEアカウントを介して参加できる形に設計されています。LINE公式アカウントの友だちがキャンペーンのたびに増え、その人たちがどの施策に参加したかを把握できるようになりました。また、アンケート施策を重視し、ユーザーの行動だけでなくその時の“気持ち”や、ブランドに対する態度変容も把握して次の施策につなげています。
※LINEアカウントと紐づいた行動データの取得・活用にはユーザーの許諾が必須となります。継続して楽しめる体験を提供しながら、リアルタイムで効果検証を実現
安成:最後のフェーズ「運用型販促」については、どのような取り組みをしましたか。
佐野:あくまで一例にはなりますが、2023年10月に発売開始した、アルコール分3.5%の「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」において、AIを活用したデジタル販促ソリューション「SCAN DA CAN」を実施しました。これは、缶をスマホで撮影するだけでキャンペーンに応募できる購買証明システムです。
リアルタイムで分析しながら施策を改善し、日々PDCAを回しながらキャンペーン成果最大化を追求します。また発売時の初期飲用者データを取得・分析することで、以降の同商品のマーケティングに有効活用していくことを強く意識していました。
平嶋:キャンペーンに対する反応や参加傾向は、時系列で分析することで明確になっていきます。キャンペーンの効果について、リアルタイムかつ時系列で検証可能なデータを取得できることが、この施策のメリットです。
佐野:CX面においては、缶をスマホのカメラでかざすと「パックマン」のARゲームで遊べる仕掛けを施しました。驚きを提供してユーザーを引き込みながら、顧客データを収集することを重視した設計になっています。
安成:ゲームの体験設計で工夫したことを教えてください。
小田:「パックマン」は、皆に知られるゲームで、ルールもわかりやすいことから採用しました。体験設計で重視したのは、驚きを意味する「WOW」をともなうこと。缶をスマホでかざすと、ARによって商品そのものが変身し、ラベル部分が開いてキャラクターが出てきます。新規のブランド訴求であるため、まずは多くの方に興味を持っていただける仕掛けを取り入れました。
もう一つ重視した点は、熱中できる仕組み作りです。ユーザーが競い合ってゲームにのめり込めるように、ランキング機能を設定しました。最初の仕掛けに驚くだけでなく、継続して楽しめる体験設計を意識しています。インタラクティブなゲームの強みを活かし、認知から飲用し続ける段階まで、フルファネルを意識した体験作りとなっています。