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売上140%アップ、魚肉ソーセージ躍進の裏にあるPR戦略とは?
水産・加工食品事業を営むマルハニチロ。2024年2月の「DHA入りリサーラソーセージω(オメガ)」発売を機に、魚肉ソーセージ「リサーラシリーズ」の売上が昨対比で140%アップし、さらに魚肉ソーセージ市場全体の売上も向上しています。

その背景には、ジェイアンドティプランニング社ととともに取り組んだテレビ・メディア・SNSでの段階的な情報拡散による話題化と魚肉ソーセージの魅力再発見の取り組みがあります。今回は、同取り組みを担当したマルハニチロの綿引さんに詳しいお話を取材します。
「魚肉ソーセージ=古い・過去のもの」を払拭
――はじめに綿引さんの担当業務を教えてください。
チルド食品事業部 すりみ食品課は、ちくわや魚肉ソーセージなど魚のすり身を使った食品の管理・企画・開発をしています。私は魚肉ソーセージ担当として、今回の「DHA入りリサーラソーセージω(以下、リサーラω)」のプロモーションを推進しました。

――プロモーションをスタートした当時、業界が抱えていた課題や、マルハニチロ様の中にあった課題を教えてください。
魚肉ソーセージは、弊社で1953年から製造・販売している歴史のある食品です。しかし、市場規模は1970年代を境に縮小傾向にあり、直近は微減・微増を繰り返してきました。世間的には「昔ながらの食べ物」というイメージが強く、「実は健康価値のある食品」であることを伝えきれていないという課題がありました。
そこで2024年2月、DHA・EPAを配合して日本で初めて心血管疾患リスクの低減を謳った特定保健用食品として、消費者庁より認可を受けた魚肉ソーセージ「DHA入りリサーラソーセージω」を発売。弊社としては約10年ぶりとなる魚肉ソーセージのテレビCMを打ちました。社内の期待値が非常に高かったこともあり、リサーラωや魚肉ソーセージ自体をもっと知っていただくための取り組みがテレビCM以外にも必要だと感じていました。
複層的なプロモーションで「カテゴリー」の成長を図った
――様々なメディアに取り上げられたことがきっかけとなり、SNSで口コミが広がったと聞いています。どのような戦略立案やアクションをされたのでしょうか。
最初は「リサーラシリーズ」のメイン購買層であるシニア世代への訴求として、テレビCMの制作に重点を置き、2024年3月に全国でオンエアしました。同時に、魚肉ソーセージ自体を全年齢層向けにアピールする施策として、2〜3月に新商品発表会とInstagramでインフルエンサー投稿を実施。6月には、リサーラωの健康効果をWeb、マスメディア等で露出させたことで、SNS上で口コミが広がっていったのです。
メディア露出以外にも、スーパーの店頭で商品を並べた商品コンテストを開催し、工場見学も積極的にお受けするなど、流通企業に魚肉ソーセージを取り扱っていただき、魚肉ソーセージの認知を広げるため、様々な層に向けて働きかけを行いました。
9月にはリサーラωの健康効果や売上アップに関する記事がYahoo!トップに載りました。記事を知ったテレビ局によって「なぜ今魚肉ソーセージなのか」をテーマに特集が組まれ、それを機に、レシピプラットフォームでトレンド入りを果たし、オーガニック検索数も上がり、さらにメディア露出に拍車がかかるといった好循環が生まれています。
当社は半期に1回は新商品を出しているのですが、中でもリサーラωの販売は魚肉ソーセージカテゴリーとしての勝負どころだと考えていました。そのために予算も大きく使い、魚肉ソーセージカテゴリー全体が浮上するきっかけになる取り組みを仕掛けています。その結果が口コミの広がりにも寄与したのではないでしょうか。