アプリを軸に加速する「個客体験」の再設計
高山氏が最も強調したのは、「データを基にした心地良い体験設計」の重要性だ。
かつての共通ポイント事業においては、自社サービスの規模やポイント還元率といった「競争優位性」が最優先される傾向にあった。
しかし現在では、一人ひとりの生活者の暮らしを高解像度で理解し、それに基づいて日常の体験そのものをアップデートすることが求められている。体験価値が向上すれば、ユーザーによるポイントの利用機会が自然と広がり、それによってさらなる顧客理解が深まるという循環が生まれるからだ。
しかし現状では、支払いの瞬間やポイント保有数を確認するタイミングでしかアプリが開かれず、企業側からユーザーへの一方通行な関係性に留まっている。体験価値の向上と顧客理解の深化という好循環を生み出すため、同社ではアプリをコミュニケーションの中心に据え、日常的な接点を強化することによるCXの再設計に着手。その伴走パートナーとしてプレイドを選定した。
アプリにおけるCXの現状把握から詳細な顧客分析、そして具体的な施策の具現化までを一貫して実行する中で、高山氏は、重視している3つのポイントを挙げた。
1. 日常行動の価値が生まれる体験
会員との最大の接点である「購買」は瞬間的なイベントだが、非常に身近で発生頻度の高い顧客接点でもある。コンビニやスーパーでの買い物に限らず、各種サービスの利用や資産形成といった多様な購買シーンに溶け込む存在へとVポイントアプリを進化させ、常に価値を感じられる体験を提供する。
2. 継続する体験設計(体験メディア化)
Vポイントアプリでは、一人ひとりの会員の多種多様な行動や興味関心に合わせて機能やコンテンツの拡充(リッチ化)を進めている。会員の生活リズムや日常の文脈に合わせた最適なコンテンツを提供し、意識せずとも日常的に利用したくなるような体験を設計することで、「自然と開きたくなるアプリ」への進化を図っている。
3. 「個客体験」へのシフト
従来は、同一のクーポンやキャンペーンを一律で幅広い会員へ一斉配信するなど、平均化された最適化にとどまっていた。今後は、性別や年代といった基本属性情報だけでなく、日々の行動データや興味関心、その時々の状況や文脈を踏まえ、一人ひとりに最適化された「個客体験」の提供を加速させていく。
「還元」から「価値創造」へ。Vポイントが描く個客体験の未来
こうした一連の取り組みにおいて、ポイントが果たす役割が再定義されようとしている。高山氏は、ポイントの進化を次のように語る。
「これまでのポイントは、ユーザーに経済的メリットを返す『還元装置』でした。しかしこれからは、人とサービスを滑らかにつなぐ『回遊装置』であり、日常に最適な提案を届ける『体験装置』、そしてデータと共創によって新しい価値を生み出す『価値創造装置』へと進化させていきます」
Vポイントが生活者の体験を豊かにし、企業とユーザーの新しい関係性を構築する触媒へと変わる。この経済的価値から「体験価値」へのシフトこそが、同社が目指すCX・LX再設計の本質と言えるだろう。
セッションの締めくくりとして両氏は、「今まさに足元で取り組んでいる施策はあるものの、まだ生活者の皆様の手元まで届ききっていない部分も多い。お客様の日常をより良くするために、これからのVポイントの進化にぜひ期待してほしい」と語り、生活者と提携企業双方に向けた意欲を示して講演を終えた。

