明日から使える「10のCX視点」
――読者のマーケターに向けて、明日から日々の施策に取り入れられる「CX視点」のヒントがあれば教えてください。
白根:顧客との関係性を意識したマーケティングを実践するために、覚えておいていただきたい「10の視点」があります。施策ごとに方向性がブレそうな時に、チーム全員が立ち返るべき「羅針盤」として意識してみてください。
【マーケターが持つべき「10のCX視点」】
- 顧客は体験を通じて「感情の記憶」を積み重ね、企業との関係性を育てていく
- 顧客には、個別ジャーニーごとに、なりたい状態/気持ち(ゴール)がある
- 顧客はなりたい状態/気持ちを踏まえて、次に体験することを無意識に期待・予想している
- 顧客が無意識に期待・予想したことが、CXのベースライン(基準)になっている
- 顧客は期待・予想に沿って、五感で感じる手がかりを無意識に意味づけ、評価し、感情を抱く
- 期待・予想の範囲を超える体験は、驚きを伴う強いポジティブ/ネガティブな感情をもたらす
- 一つ前の個別ジャーニーは、次の個別ジャーニーの手がかりになっている
- 手がかりに一貫性があると、体験の物語化を強め、感情が記憶に定着しやすくなる
- 手がかりに一貫性がないと顧客は違和感をおぼえ、不信の種になる
- ジャーニーのエンドは、顧客が振り返った時に訪れる
白根:感情を積み重ね、顧客の中にブランドが記憶されることで関係性が育ちます。このメカニズムを意識することで個別最適ではない施策を検討できるようになります。
また、顧客は製品・サービスを通じて達成したいゴールがありますが、その手前の「探す」「試す」などの個別ジャーニーにおいても、どんな結果を得たいか・どんな気持ちになりたいかといったゴールがあります。各ジャーニーにおけるゴールを定義し、そこに焦点を当てることで、顧客にとって価値ある施策を検討できます。そして、自分が担当している個別ジャーニーの結果を、次の個別ジャーニーの担当者・担当部門に引き継ぎ、ジャーニー間のつながりを作ることも大切です。
顧客は、体験のピークと終わり(エンド)を記憶に残す傾向があります。ジャーニーのエンドとは、顧客が振り返った瞬間に起こります。マーケターは、「振り返りの機会」をデザインすることで、顧客のジャーニーの終わらせ方をより良いものにできます。
なお、体験の良し悪しの基準とは、顧客が無意識に予想・期待する体験と実際の体験の比較です。顧客の予想や期待を理解し、そこからズレないこと、つまり期待そのもののデザインも重要です。マーケターが提供している広告やコンテンツは、意図を超えて五感レベルで顧客に影響を与えています。この視点を持つだけで、単発の成果追求から一歩進んだデザインができるようになります。
関係性を育み、自社の成長を牽引する
――最後に、今後マーケターのキャリアにおけるCXの重要性はどのように高まっていくか、考えをうかがえますか。
白根:これからのビジネスの焦点は、「売って終わり」の交換価値から、関係を作って文脈を作っていく「関係価値」や「文脈価値」へと移ってきています。単に割引や特典のような「金銭的な絆」だけでなく、「自分のことを理解してくれている」と感じられるような「社会的な絆」や、日常に溶け込む「構造的な絆」を育てていく。そのため、マーケターの役割も単に商品を売る支援だけでなく、売ったあとの関係をどう育てていくかという領域へと重心が移っていくと思います。
インセンティブの提供といった短期的な成果を出すようなやり方は効果が低減していき、結果的に顧客の中に良い気持ちが積み上がりません。長期的にどう関係を築いていくかという視点がマーケターにとってより大事になってきます。
CXをしっかり取り入れ、顧客が価値を得てその結果として企業価値が生まれるという因果関係を実践できれば、マーケターが自社の長期的成長を牽引する存在になると思います。
