業務効率化止まりでよいのか? プレイドが描く、AIとの本当の共創
Context Lakeに加えて、本セッションでは2つの新しいAIプロダクトが発表された。「Agent Studio」と「Obel(オーベル)」だ。
Agent Studioは、管理画面の操作をAIエージェントに集約し、ユーザーが自然言語で意図を伝えるだけで機能を横断してアクションできるインターフェイス。また、Obelは、AIが安全にデータを扱い、開発できるようにする統合開発およびデータ基盤である。それぞれの詳しい特徴を、CPOの竹村氏が紹介した。
「操作」はもはや人間の役割ではない インターフェイスを変革する「Agent Studio」
プレイドは、顧客の行動データをリアルタイムに分析し、マーケティング施策の実行を支援する「KARTE」を11年にわたって提供してきた。だが、アップデートを重ねるうちに、機能ごとに管理画面が分かれ、裏側のデータ構造も複雑化。ユーザーが画面を行き来する負担を強いられていたという。
これを解決する手段がAgent Studioである。ユーザーとの接点をAIエージェントに集約し、各機能をAIから見てフラットな存在に再定義した。これにより、AIが自ら機能を横断して自由に呼び出せるようになる。

この仕組みを支えているのが、各社に蓄積されたファーストパーティカスタマーデータと、プレイドが11年間磨き込んできたKARTEのアクション機能だ。両者が同じ基盤上で融合することで、AIが顧客コンテクストを正しく理解し、的確なアクションを導き出せる仕組みとなっている。また、実行ログは新しいデータとして基盤上に蓄積されるため、使えば使うほどにAIの精度が高まっていく。Remote MCPにも対応しており、外部の多様なAIエージェントを相互に呼び出すことも可能だ。

AIで作れる≠安全に運用できる 攻めの挑戦を支える“強固な守り”「Obel」
Agent Studioによってユーザーの負荷が解消されるわけだが、その一方で竹村氏はこう問いかける。
「便利なAIエージェントさえ存在すれば、ユーザーの意図は実現できます。しかし、それだけで課題はすべてなくなるのでしょうか」(竹村氏)
この疑問から生まれたのがObelだという。AIの進化によって、担当者は従来の役割や業務の壁を越えて動けるようになりつつある。この状況に対して「AIで必要な機能が容易に作れることと、それを安全に安定して運用し続けられることは、まったくの別物」と竹村氏は指摘した。
「統率がとれていない環境でAIを活用すれば、意図せぬデータの制御や誰もメンテナンスできないシステムの量産が発生してしまいます。結果的に、将来への負債を積み上げるだけです」(竹村氏)
AIに適切な制約をかける基盤さえあれば、担当者は不安なくAIに多くを委ね、これまでの業務領域からはみ出した仕事にも踏み出せる。この思想に基づいて、ObelはデータレイヤーのObel Data Lakeと、アプリケーションレイヤーのObel Craft Studioという2層で構成されている。
まずObel Data Lakeは、社内に散在する機密データを、テナント分離された専用クラウド環境にセキュアに取り込み、ファーストパーティカスタマーデータを安全に統合する。その上で、次のような機能を備えている。
- ゼロコピーの仕組みとMCPの標準搭載により、AIが直接データを操作でき、必要なときには外部へも安全に供給・連携できる
- 列・行レベルの細かなアクセス制御と、網羅的な操作履歴の管理によって、強固なガバナンスの下でAIに業務を任せられる
- Context Lakeとシームレスに接続し、保有するデータを顧客の深いコンテクストへと進化させられる
また、Obel Craft Studioは、人とAIが共創しながらアプリやWebサイトを形にするインターフェイスである。ノーコードで直感的に扱え、AIへの丸投げでも人力頼みでもない、双方向のものづくりを実現。具体的には、次のようなことが可能だ。
- AIが生成したものを人が視覚的に確認してフィードバックし、人が編集したものをAIが修正する共創ループを回す
- AIに直接コードを書かせず、中間表現などのガードレールを設置することで、AIの自由度をコントロールする
- 履歴管理によって、AIのアクションを後から確認できる。さらに、過去の文脈や意図をAIに再インプットして、継続的に改善できる
なお、Agent Studioは2026年7月9日から招待制で提供が開始された。Obelは2026年秋に招待制で提供開始される予定だ。Context Lakeに、Agent StudioとObel。これらすべてが組み合わさることで、人の意思をダイレクトに形にする体制が実現できるという。
「この一連の流れこそが、AI活用を単なる業務効率化に終わらせず、独自の価値を築き上げる“攻め”の活動へとつなげるものです。プレイドは、コンテクストデータとAIネイティブなプロダクトを通じて、人が持つポテンシャルとデータの価値を最大化する支援を続けていきます」(竹村氏)
セッションの終盤、再び登壇した倉橋氏は、データ活用の本質的な課題について言及した。どれほど優れたAIを導入して顧客中心の事業作りを目指しても、「企業文化や日々のオペレーションといった活動自体が、最終的な成果(出力)を決める」という。だからこそ、社内のあらゆる業務コンテクストをデータ化し、AIに渡せる基盤が不可欠となるのだ。同氏は、顧客コンテクストの活用をマーケティング部門だけにとどめず、あらゆる職種の新たな業務モデルへと昇華させること──それこそが、プレイドが提案する次世代の競争優位のあり方だと述べ、セッションを締め括った。

