成果を最大化するために必要なものとは?
押久保:課題といえば、経営層と合意を図れているかどうかがデジタル施策の成果を左右する、という声も聞きます。ツール活用の失敗例など含めて、いかがでしょうか?
笹:One to Oneというテーマを掲げる以上、顧客を細かく知ることが不可欠になり、社内外の調整が発生し、コストもかかります。この点を考慮すると、経営層と「顧客を知る」ことの重要性を共有しておくことは大事ですね。その信念がないと、結局はツールを導入しても結局、メール一斉配信を続けることになりかねません。
福田:成果を可視化することで、社内でのマーケティング部門の価値を上げて、経営層の理解を求めることも可能です。逆に失敗例につながりやすいのは、コストを抑えることだけを考えたスモールスタートです。データの量や対象とする事業などの観点では、スモールスタートでも、俯瞰的な視点で将来どのようなインパクトを事業に与えたいのかを明確にしなければ、得られる成果は小さいままになります。米国では一般的ですが、マーケティングオペレーションという数値を管理する役割の人が日本には少ないので、その役割の育成も当社でできればと考えています。
安西:事業を成長させるためには、福田さんが言われた俯瞰的な視点が重要になってきますね。また、分析して仮説を立てて検証するデータドリブン型と、まずは試してみるテストドリブン型のどちらが適しているかは組織や現場によって変わります。うまくいく方法で組織を巻き込んでいく、という発想が大事だと思います。
顧客接点が増え続ける今、どう体験をつくり上げるか
押久保:では最後に、自社の製品を通してどんな世界をつくっていきたいか、今後の展望をお聞かせください。
笹:ひとつのプラットフォーム、あるいはひとつの部門や意思系統の中で、まだまだマルチチャネルで顧客接点を十分には持てていないと思います。企業内の個別最適の問題もありますが、ここは我々がもっと努力すべき点だと感じています。最適なタイミングで通知を送ればそれは受け手のベネフィットになるので、そういったキャンペーンを日本で数多く支援するのが今年の目標です。
福田:先日、Facebookのカスタムオーディエンスとの連携も発表しましたが、アドテクとの連携を広げてより精緻なターゲティングに注力していきます。IoTをはじめとして、マーケティングは様々なものと連携することにより大きな価値を生み出していくので、パートナーのエコシステムの拡大は強化していきます。日本ローカルのマーケティングテクノロジーベンダーとも連携を深めていくつもりです。
安西:先日、米国でアドビは大きなサミットを開催したのですが、「体験こそブランドだ」というメッセージを発信しました。オンラインに限らず、店舗のデジタルサイネージやiBeaconの活用で、オフラインとも統合した体験のデザインが可能になっています。この部分の支援に、特に注力していきたいと考えています。
押久保:各社とも、ますます精力的に市場を拡大していく意気込みですね。本日はありがとうございました。