関心は加速、導入が進むにつれ課題となる部門間連携
押久保:いずれも、広告やマーケティングの出身ではない方々がマーケティングツールを提供するようになっている、というのは象徴的ですね。現在の市場やクライアントのニーズをどうご覧になっていますか? まずは日本進出1年目の福田さん、いかがでしょうか。
福田:社長就任の際に「2014年はマーケティングオートメーション元年」とお話ししましたが、予想以上に速いスピードで導入が進んでいます。既にやりたいことや課題が明確で「こういうことがツールで実現できるだろうか」と具体的な相談をよく聞きますね。これは、企業規模やBtoB/Cを問わず、同じ傾向です。
笹:当社のクライアントに多いBtoC企業では、ツールの導入を検討する際に3つのパターンがあります。ひとつは、これまで代理店や量販店経由で販売していたため、直接の顧客接点を強化したいというケース。2つ目は、メール中心の状態からモバイル、LINEなどにチャネルを広げてOne to Oneに着手したいというケース。3つ目は、Web閲覧や機器ログなどを取り入れて真のOne to Oneの実現を狙うケースです。
安西:BtoCでも特に大手企業の場合は、広告やウェブサイト、アプリなど部署が異なる接点を統一したい、というニーズが生まれています。今、個人が発信するさまざまな情報を把握すればユーザー像が明確になり、システム的にもその人の状況に合わせたメッセージ配信が可能です。このユーザー像をアドビでは「デジタルセルフ(デジタル世界の自分)」と言っていますが、これを活かすにはチャネル横断、部門横断が必要です。
組織や人材育成の課題、解決のポイントはあるか
押久保:組織や人材育成における課題は、ツールの活用という観点から解決のポイントはあるのでしょうか?
笹:人材については、育てるしかないというのが実情です。しかし、マーケティング領域はそもそも試しながら知見を貯めていくという側面があるので、試しながらベンダーとともに育てる、育つことも可能だと思います。実際、そういった機運も感じますね。
福田:データドリブン、ビッグデータと聞くと、まず大量のデータとそれを分析するためのエキスパート人材が必要だと思われがちです。しかし、仮説とそれを検証するためのデータがあれば、まず、実行してみるのが大事だと思います。データが集まるまで待っていて、マーケティング施策の実行が遅れてしまえば、データ分析による競争優位性も無駄になってしまいます。
また、コーポレートレベルのマーケティングは、どこが主導するかで難航しがちです。事業部門がマーケティング部門の協力を得ながら全体を率い、現場ではしっかり機能するツールを選んで試していく、というアプローチが有効だと思います。
安西:組織の「サイロ化」は、各所で問題になっていますよね。米国で今、流行のキーワードになっているのが「Center of Excellence」です。COEとも言われ、ベンダーをどう使うか、関係部署とのアライアンスをどうするか、また社員トレーニングも含めてナレッジを蓄積して主導する中央専門集団を意味しています。実際、当社の大手クライアントでも直近で例があり、広がる可能性がありそうです。