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スモールマスはデジタルに閉じたものではない。データ起点でコミュニティを発見、売上を拡大した花王の事例

 花王が提唱する「スモールマス」という概念。ライフスタイルの多様化が進んだことでマスマーケティングが効きにくくなった今、一定の規模を持つ市場が多数生まれている状況を示すものだ。同社に深く根付くスモールマスの概念に基づき、デジタルを起点に売上をつくった「ソフィーナ プリマヴィスタ」と「ビオレ 冷シート」の成功事例を紹介する。

スモールマスとは何か?

――「スモールマス」という概念は、もともとは花王の吉田勝彦専務(※吉の字は、正しくは「土(つち)」に「口(くち)」と書く)が言い始めた造語だとうかがっていますが、具体的にはどんな定義なのでしょうか?

花王株式会社 デジタルマーケティング部 データサイエンス室 広末 守正氏

広末:“花王はマスマーケティングの会社”という印象をお持ちの方が多いかと思いますが、生活者のライフスタイルの多様化が進んだ今日、マス的な市場がだんだんとなくなっていることは誰もが実感しているでしょう。例えば、シャンプーや洗剤などでは、様々なブランドの商品が展開されており、10%以上のシェアを占めるようなブランドはあまりありません。

 このような背景もあり、一定の規模を持った市場を再定義しようというところから、スモールマスの考え方は始まっています。

――スモールマスという言葉は、花王の中ではどの程度浸透しているのでしょうか?

市橋:デジタルマーケティング部門だけでなく、事業部の私たちも含め、花王には広く根付いている概念ですね。

――スモールマスの施策は、基本的にはデジタルがメインになるのでしょうか?

広末:これから事例をもとにお話ししますが、スモールマスは、けっしてデジタルに閉じたものではありません。スモールマスの背景には、コミュニティがあります。そのコミュニティを見つける際にデジタルは大きく役立ちますが、そのコミュニティ自体はデジタルだけでなく、リアルなものもあります。

 また、花王は昔から口コミの力を重視しています。広告だけではお客様の心は動かなくなっているけれど、お客様同士の会話から消費が生まれていく。これはコミュニティに着目するスモールマスの施策にも通じています。

想定の30倍のスピードで完売!男性にも響いた化粧下地「ブラックプリマ」

花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 ソフィーナ事業部 市橋 京子氏

――ではまずは、スモールマスに着目し、デジタルを中心に売上をつくった「ソフィーナ プリマヴィスタ」の皮脂くずれ防止 化粧下地 超オイリー肌用、通称「ブラックプリマ」の事例について教えてください。

市橋:もともと「プリマヴィスタ」の皮脂くずれ防止 化粧下地は、“汗・皮脂につよく、化粧くずれしにくい”ことがお客様に強く支持されている商品です。メインユーザーは20~40代の女性ですね。ただ、既存ユーザーの1~2割程度は、より皮脂くずれに強い商品を求めていることが、調査から浮き上がってきたんです。そこでよりテカりにくく、サラサラした使用感に特化した化粧下地「ブラックプリマ」をEC専売で開発しました。

ーー具体的な顧客像は?

市橋:まずは超オイリー肌の悩みを持っている方です。次に、日常的に活動量と人に見られる機会の多い方(外勤の方など)ですね。またメイクをする男性や、身だしなみとしてテカリを気にする美容意識の高い男性の方たちもターゲットとして見込んでいました。

――EC専売だとリアルなお店で見かけたり、手に取ってもらう機会がないので、商品の存在や理解を深めるのが難しそうです。どうやって見込み顧客へアプローチしていったのでしょうか。一連の施策を教えてください。

市橋:今回は、4つのECチェーン限定で販売しました。正直なところ、はじめての取り組みだったこともあり、ニーズがあっても実際にどれほど買っていただけるかは予測が困難でした。そんな中なぜEC限定にしたのか、それには明確な理由があります。

 もともと競合と比べ、プリマヴィスタはECでの話題が少ないという課題がありました。まずはお客様の「これいいよ」という口コミが広がっていくベースをデジタルでも作りたかったんです。また、機能が尖った商品なので、ネット上でよく口コミや商品情報を見てもらってからご購入いただきたいという思いもありましたね。

広末:弊社でもソーシャルリスニングに取り組んでいますが、競合ブランドよりもその量は圧倒的に少なかったんです。また、内容も多様性がなく、マスでコミュニケーションしたものがそのまま出てきている感じでした。

 「自分に合う」と思っていただけないと、購入にはつながりません。だから、口コミに多様な切り口を持たせたかったんです。それで話題量をKPIとして、それを盛り上げて行くには、「ブラックプリマ」は商品性が尖っているので相性がいいのではと、この一連の施策が動き始めました。

――EC限定というのは、珍しいことなのでしょうか?

広末:最近は増えてきていますね。ECは口コミが見られる場ということもあって、先行発売をECで行い評判を広めておき、本発売に備えるという事例も増えています。

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この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/07/26 08:00 https://markezine.jp/article/detail/28851

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