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第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

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顧客が求めるパーソナライゼーションをAI×ヒトで実現 今、マーケターに求められるものとは?

AIと人間が手を携えることで質の高いパーソナライゼーションが実現

――想定するユーザーのペルソナやシチュエーションを増やしていくと、パーソナライズというのは途方もない労力を要しますよね。

岩本:おっしゃるとおりです。パーソナライゼーションを進めるにあたって、「誰に」「どんなメッセージを」「どのタイミングで」を設計するのかが、重要な要素になります。ここで問題になるのが、出し分けの基準となる「誰に」の設計は正解にたどり着くのが難しく、非常に手間がかかることです。

 たとえば、初回来訪の方なのか、2回目の方なのかで当てるべきメッセージが違うかもしれませんし、どの商品を見ているかによっても出し分けたほうがいい場合もあります。考えるほどにテストパターンは膨大になり、検証や情報の取りまとめにも時間がかかるため、マーケターはCXの追求において妥協せざるを得ませんでした。しかし、ここで救世主となるのがAIです。

 人間であれば、膨大なパターンを考えセットして検証するのに時間がかかりますが、AIは無数のパターンを試行して最適化し、考えもつかなかった知見を一瞬で引き出してくれます。このように、人が考え出すパターン数や実行するスピードには限界がありますが、AIを使うことで想定外のセグメントに意外なメッセージが刺さる、というケースも出てきます。

――なるほど。人間がWebサイトの施策をプランニングするにあたり、AIとの分業も必要になってくるのでしょうか。

岩本:はい、AIが得意なことと人にしかできないことがあると思います。たとえば「どんなメッセージを伝えるか」を考えるのは人間の役割であり、「誰に対して」×「どのメッセージを」の効率的な組み合わせを考えるのはAIが得意な領域です。最近では「誰に対して」の部分、つまりセグメント設計までAIでできるようになりました。

 ECサイトのパーソナライゼーションならば、AIにCRM情報を連携させてユーザーの会員ランクを最適化の材料に加えることも、コールセンターへの入電有無や対応内容など、様々な要素を勘案させることもできます。

 このように、パターンの検証、高度な分析の加味といったマーケターが理想とするパーソナライゼーションがAIによって実現すると言っていいと思います。

マクドナルドが惚れ込んで買収したAIパーソナライゼーションツール

――岩本さんが特に注目しているAIのパーソナライゼーションツールを教えてください。

岩本:我々は米マクドナルド社がヘビーユーザーで、買収するにまで至ったことで話題となった「Dynamic Yield」に注目しており、お客様への導入を支援しています。

 Dynamic YieldはいわゆるWeb接客ツールですが、他のツールにはない特徴的な機能が3つあります。一つは「プレディクティブ・ターゲティング」と呼ばれる機能。AIが最も効果が高いと推定されるメッセージとターゲティングを提示し、ボタンを押せばそのまま施策を実行できます。

 もう一つは「ダイナミック・アロケーション」。A/Bテストの結果をモニタリングし続け、外部要因の影響を小さくしながら、随時結果が伸びそうな配信パターンへの配信数を自動的に増やす機能です。

 最後に「レコメンデーション」です。一般的なレコメンデーションは、「一緒に購入されている商品」や「人気商品」などを提示しますが、Dynamic Yieldのレコメンデーションの場合、13ものレコメンドアルゴリズムを備えており、そのアルゴリズムを組み合わせて使うことが可能です。また、アルゴリズムをどう割り当てていいかわからない場合、AIが自動的に最適なアルゴリズムのパターンを導き出すので、負荷なく高い効果を期待できます。

――アルゴリズムをAI側が自動的に選んでくれるのはすごいですね。

岩本:レコメンドの中のどの枠にどのアルゴリズムを適用するかは、セグメントと同様にいくら考えても正解のない領域だと思います。人間ならではの知恵が活かせない領域で頭を悩ませるのは生産的とは言えませんよね。

 世の中には様々なパーソナライゼーションツールがありますが「7割の人には最適だが、3割の人にはうまくあてはまらない」パーソナライゼーションになっているケースが多いように感じます。7割の適合率を10割に近いところまで持っていき、精緻で細分化されたパーソナライゼーションを実現できるのは、AIならではだと思います。

――どういった業界での成功事例が多いのでしょうか。

岩本:アパレルやECのように、SKUが多い分野で多くの実績があります。米マクドナルド社はドライブスルーでDynamic Yieldを導入し、車のナンバーや気候などのデータを活用しながらドライバーごとに最適なメニューを提示して成果を挙げています。一方で、SKUは少ないけれど、パーソナライズが有効な分野でも事例が増えつつあります。

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他部署連携による顧客理解の深化がマーケターのミッションに

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/09 11:00 https://markezine.jp/article/detail/32608

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