生活者がエボークトセットに選んでいるブランドの数は?
続けて松田氏はエボークトセットの解説を行った。松田氏によると、エボークトセットはブランドカテゴライゼーションという枠組みの中で理論付けられているという。
上の図の左側にある「入手可能集合」は、ある商品のカテゴリーにおいて、世の中に存在し得る様々なブランドの集合である。そこから知名段階、処理段階、考慮段階と、3つのフェーズを経て購入に至るのが商品購買のプロセスとなる。
エボークトセットは3つのフェーズのうち、考慮段階の中にある「想起集合」に該当する。
生活者が「知名集合」として思い浮かべたブランドのうち、サービスや商品情報を理解しているブランドが「処理集合」を経て、そこから自分が買うべきだと思える商品のみ「想起集合」に到達する。
この一連のプロセスの中で、想起集合に入らなかったブランドは、購入検討対象から抜け落ちてしまうのである。
「様々な分野・カテゴリーでエボークトセット調査を行いますが、想起集合の中に入るブランドの数は、ジャンルを問わずおよそ2個程度です」(松田氏)
中山氏が自身の経験から感じたように、如何に認知度が高くても「想起集合」の2ブランドに入れない限り、購入検討の対象となるのは難しい。
「ブランドとして名前を知られるだけではなく、商品の質や特性について理解してもらった上で、いかに処理集合から想起集合の中に入っていくかが重要になると考えています」(松田氏)
CEP調査の活用によって差別化のヒントを得る
ブランドが生活者にとっての購入検討対象となるためには、具体的にどのようなイメージが紐づいていく必要があるのだろうか。今回の調査では、バンテリンコーワが想起集合に含まれているか、ブランドに対してどのようなイメージを持たれているかについての検証が行われた。
ブランドとイメージの結びつきについては、エボークトセット調査と併せて、CEP(カテゴリーエントリーポイント)調査も実施。CEPとは、生活者が何かを購入しようと考えたとき、特定のブランドを想起するためのきっかけやヒントとなるものだ。
たとえば、生活者が数ある清涼飲料水の中から「コーラ」を選んだとする。このとき、コーラを選んだ理由が「ハンバーガーと一緒に飲みたいから」であれば、「ハンバーガーと一緒に」がコーラのCEPである(参考:ブランド想起の入り口、カテゴリーエントリーポイント(CEP)の重要性-ネオマーケティング-)。
「バンテリンコーワ自体のブランドコンセプトとして『ツラい痛みにジカに効く』というものがあります。今回の調査では、『痛みに効く』からのブランド想起率が高いという結果が得られ安心しています」(中山氏)
一方で、「痛みに効く」という価値は、競合ブランドでも同様に想起されるCEPであるため、ブランドとして競合他社との差別化を図ることの重要性を再認識したという。
「CEP調査によって、『痛みに効く』以外でバンテリンコーワが想起されるようなキーワードを発見することができました。今後ブランドとしての独自性を考える上で、大きな収穫になったと感じています」(中山氏)