SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZine Day 2022 Spring

ECと実店舗をかけ合わせ、お客様と徹底的に向き合える組織とは? BEAMSがたどり着いた答えと挑戦

BEAMSが推進した3つの独自OMO戦略

 顧客とのエンゲージメント強化・オムニチャネル化を進めるために、BEAMSがこれまでに実施したOMO施策は多岐にわたる。渡部氏は例として「ありがとうプロジェクト」「WEBチャット接客の実施」「個客カルテ」の3つの施策を紹介した。

情緒的価値の醸成に特化した「ありがとうプロジェクト」

 1つ目の「ありがとうプロジェクト」は、オンラインで購入した顧客に対し感謝の気持ちを届けることを目的とした、情緒的価値の醸成に特化した施策だ。

 「コロナの影響で店舗売上のシェアは10%ほど減少し、かわりにECの売上が増加しました。お客様自身もコロナ禍への対応で大変な中でも、BEAMSの商品を選び、購入していただけたことへ感謝の気持ちを伝えたい。そんな想いから生まれた施策でした」(渡部氏)

 商品配送時、社員が手書きしたメッセージカードを商品に同梱。さらに、メッセージカードに記載された二次元バーコードを読み込むと、メッセージカードのメイキング動画を閲覧できる仕様にした。さらに、レーベルごとに購入者向けのメッセージ動画を作成。ECストアで購入後、再度訪問した際に動画の案内を表示し、クリックするとメッセージ動画が流れる仕様にした。

 実施後はカスタマーサービスデスクや店舗に、顧客からの感謝の電話やメールが多数寄せられたという。

店舗スタッフがリアルタイムにWEBチャットで接客

 2つ目の「WEBチャット接客の実施」は、約1ヵ月間、ECサイト上で店舗スタッフがチャット接客に応じるという取り組みだ。これは情緒的価値と機能的価値双方を生み出せると言える。

 一般的に、WEBチャット接客はオペレーターが答える場合が多いが、同取り組みでは販売スキルの高い店舗スタッフを登用。約1ヵ月間、シフト制で店舗スタッフが1,500件ほどの問い合わせに対応した。

 店舗社員とチャットでやり取りして、その後実際に来店して購入に至るケースもあったという。想定外の効果として、渡部氏は店舗社員の意識に変化が見られた点を挙げた。

 「多くの社員から、お客様と直接対面しなくても、接客はできると実感したと意見をもらいました。また、お客様がECサイトで購入する際、どのような点に悩まれているのかが実際にチャットでやり取りする中で読み取れるため、WEBコンテンツを投稿する時の参考になるという声も。試験的に1ヵ月のみ運用してみましたが、価値ある取り組みだと感じたので、本実施に向けた検討を進めています」(渡部氏)

パーソナライズには社員のオムニチャネル理解が重要

 3つ目の「個客カルテ」は、顧客の各チャネル上での行動を一元管理し、どのチャネルでもパーソナライズされた接客を実施できる状態を目指す取り組みだ。どの店舗に行ってもそれまでの行動を踏まえたうえで対応できる仕組みを構築する。

 「長期的に良好な関係性を続けていくには、良い顧客体験を積み重ねていくしかありません。ですので、BEAMSだからこそ提供できる顧客体験を、どのチャネルでも同じように提供できる状態を目指しています」(渡部氏)

 顧客情報を一元管理し、どのチャネルでも一貫した顧客体験を提供するという本質的なオムニチャネル戦略を実現するにあたり、渡部氏は店舗社員の教育と投資が重要だと語る。

 店舗だけでなく、メルマガ、広告、SNSなど様々な顧客接点があることを社員が理解し、それらのチャネルも活用しながら、より良い顧客体験の実現を目指す。先述した社員のスター化や、オンライン接客賞の設置なども、社員のオムニチャネル理解に寄与している。

店舗は「劇場型」に、ECは「情緒的」に

 顧客と向き合うために組織改革を実施し、着実に進化を遂げるBEAMSは、どのような展望を見据えているのか。渡部氏は、店舗とECそれぞれの役割を再定義したうえで、「劇場型店舗」と「情緒的な価値を生み出すEC」の構築に挑むと話す。

 「店舗社員が積極的にオンラインでコンテンツを発信してファンを醸成できれば、お客様にとっては、実店舗はファンになった店員に会える場となっていきます。店頭で感動してもらえるような質の高いサービスを提供することで、まるで映画や舞台で素晴らしいコンテンツを見たような体験を提供できる。そのような劇場型店舗を目指したいです。一方ECでも、スター的な存在となった社員からのコンテンツ提供やコミュニケーションを取れる場を充実させ、情緒的価値を創出していきたいと考えています」(渡部氏)

 BEAMSが目指す理想の実現は簡単ではない。渡部氏はCX(Customer Experience)・DX(Digital Transformation)・EX(Employee Experience)の3Xに取り組む必要があるとし、全方位に対してBEAMSは取り組んでいく考えだと語る。

 「お客様と相思相愛になれることを目指して邁進していますが、当然、一朝一夕になし得るものではありません。BEAMSの資産であるヒト・店・WEBを軸にして、『認知→共感→愛着→信頼』という関係構築のステップを丁寧に進めていきたいですね」(渡部氏)

 BEAMSの挑戦は続く。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
MarkeZine Day 2022 Spring連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/05/16 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38895

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング