※本記事は、2022年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』80号に掲載したものです。
特集:ターゲティングが嫌われる時代のシン・ターゲティング
─ なぜ「ターゲティング=気持ち悪い」になってしまったのか?進化するアドテクの使い方を考える
─ コンテクスチュアル広告にみるターゲティングのこれから
─ 新しい広告の届け方:Voicyで作るパーソナリティ×リスナー×スポンサーの好循環
─ 新しい広告の届け方:「人基点」で1対nに広告を届けるデジタルOOHの現在点
─ 新しい広告の届け方:「コミュニティ」を軸にしたアプローチで生まれる、強力なエンゲージメント
─ 新しい広告の届け方:インフルエンサーマーケティングは「起用するだけ」から次のフェーズへ
─ あえてターゲティングしない。誰をも受け入れる「インクルーシブ・マーケティング」が事業成長を促す
─ 「先の広告」を考えるヒントの宝庫 カンヌ・ライオンズ、リアル開催の現地より
─ OKURA BOOTCAMPの大倉氏に聞く、社会課題を起点に生活者とつながる方法(本記事)
─ ユナイテッドアローズCDO藤原氏が率いる組織変革 ブランドの資産を活かせる強い組織へ
─ いま世の中に求められているのはどんな広告?TBWA HAKUHODO細田氏が語る、3つの広告の作り方
グローバルでの成功体験がきっかけに
──大倉さんはP&Gのパンテーンブランドで社会課題を切り口にしたキャンペーンを企画し、話題を作りました。社会課題を起点としたコミュニケーションに注目するようになったのは何かきっかけがあったのでしょうか。
私がP&GのスキンケアブランドSK-IIでグローバルのブランドマネージャーを担当していたときに行っていたキャンペーンがきっかけです。2016年にSK-Ⅱはブランドパーパスとして「CHANGE DESTINY」を掲げており、困難を乗り越えてきた女性たちのストーリーを伝えるキャンペーンを展開していました。
その中で印象的だったのが、中国の「剰女(しぇんにゅい)」に関する問題を取り上げた動画です。中国では25歳から27歳ごろを過ぎて独身の女性は「売れ残り」を意味する「剰女」のレッテルを貼られ、彼女たちは20代後半が近づくにつれ結婚しなければならないという圧力を感じていました。動画では、そういった社会的なプレッシャーに支配されない人生を送ってほしいというメッセージを込めました。
「CHANGEDESTINY」のキャンペーンは、このような社会課題にフォーカスを当てたものだけではありませんが、この中国のキャンペーンは反響が大きく、売上や利益も全世界で急激に増加したことから、それ以降注目するようになりました。
また、P&Gやその他グローバル企業の海外の取り組みを見ても、パーパスドリブンやソーシャルグッドな取り組みが上手くいっていたので、設計次第ではビジネスにも貢献できて、社会にも良い影響を与えることができると考えるようになりました。