リテール業界では商品管理体系の整備が急務
続いて、マインディアのこれまでの取り組みと課題感について田中氏が説明する。同社の主なクライアントは「リテール」「メーカー」「コンサル・その他」の3種類。それぞれに対してデータを用いた取り組みを進めている。
対リテールでは、他サービスとのクロスユースの状況、競合ECモールでの動向調査をサポート。対メーカーでは、主要ECモールのデータを横断で見ることによる、自社/競合の売上分析。受信メールBOXのデータをもとにした、ブランドの買い替え傾向の可視化などに活用されている。対コンサル・その他としては、エンドクライアントにデータ提供するための共同提案やデータ販売を共同で行うという関係性を築いている。
各プレイヤーに応じて、データホルダーとしての立場でオンラインリテールに貢献しているという現状だ。これらの活動の中で発見された市場課題があると田中氏は言う。
「業界全体でオンライン化が進んでいますが、非標準化状態に起因する工数肥大が見られます。標準がない状態であるがゆえに、各社、かなりの工数を割かざるを得ないのです」(田中氏)
リテール各社がオンライン化する際、まずは店舗に並んでいる商品をそのままEC上に持ってこようとする。すると、管理商品数が多すぎて、EC上への登録、マスタ更新作業が膨大になる。結果、本来的に取り組まなければならないプライシングやマーケティングが後回しになったり、常に手探り状態になったりしてしまう。
その直接的な原因を「基本的には分析活動不足」だと田中氏は指摘する。「まずは(オンラインの)お店に物を並べよう」と考えてしまうため、分析まで意識や手が回らないのだ。さらに掘り下げて根本の原因を探ると「統一商品管理体系がない」点が浮き上がってくる。
「要は、商品軸での分析ができる環境が現状ないのです。リテール各社様がオンラインに出ていくときにぶつかる課題を解決するために、体系的・横断的に利活用が可能な商品管理体系の整備が急務であると認識しています」(田中氏)
業界共通商品マスタ「J-MORA」が与えるインパクト
この課題を解決できるのが、リテールAI研究会が持つ業界共通商品マスタ「J-MORA」だ。
「長年の業界課題として、商品の共通マスタが存在しない点があります。メーカー・卸・小売が各々の商品マスタを作成するため、ミスもありますし、手間も膨大にかかっている。これに対するソリューションとして、業界共通商品マスタ『J-MORA』を開発しました」(今村氏)
「J-MORA」は使いたい人が使いたいモノを創るオープンな形式で構築されており、JANコード単位で必要な情報が整理される。さらに、「J-MORA」が持つオフラインデータと、マインディアの持つオンラインデータを掛け合わせることで、オンラインとオフラインのデータを行き来できるようになる。「J-MORA」は現在、研究会内に限って公開しているが、今後はオープン化に向けて準備を進めていくという。
この協業により、「統一商品管理体系がない」という課題はJ-MORAを活用してJANコードを付与することで解決できる。「分析活動不足」については、JANコードが付与されていれば商品単位での分析が行いやすい環境が整備できるため、勝ちパターンを見つける活動に注力できる。
これにより、リテールやメーカー各社が工数に埋もれることなく、効率的で再現性のある成果が出せる業務に注力できるようになるというロジックだ。