「J-MORA」×生成AIで業務効率化を実現
続いて今村氏は続いて「J-MORA」を活用した事例を紹介した。
1つ目は、Amazonの商品名をオフライン店舗での商品名に変換し、JANコードを付与するケースだ。生成AI(ChatGPT)を使った対話によって実現している。
「Amazonにおける商品名は、検索にかかりやすくするために、非常に長い名前がつけられていることがあります。ここからJANコード、商品コードを当てるのは非常に難しいです。そこで、生成AIを使って、長い商品名からオフラインでの商品名を生成します。次に、生成したオフラインの商品名と最も近いJANコードは何か、「J-MORA」上のデータを使って導き出します。この2ステップで、8割近くのEC商品にJANコードを付与することができるようになっています」(今村氏)
この手法のポイントは2つ。1つは生成AIを使うことによって、今まで難しかった複雑なタスクができるようになったこと。もう1つが、「J-MORA」側には1つの商品に対して何種類もの名づけがされたデータがあるため、小売ごとの表記ゆれに困ることなく、その中からJANコードを探せることだ。「これはすごく大きな進化だった」と今村氏は手応えを述べる。
ちなみに、生成AIを使えば、短くシンプルなオフラインの商品名を入力して、検索にかかりやすいオンライン用の商品名を生成することもできる。これは工数削減という守りの面だけでなく、マーケティングといった攻めの部分にもつながる。
データの掛け合わせは、消費者インサイトの発掘にも役立つ
2つ目の事例は、オフラインとオンラインの購買データを生成AIに読み込ませ、消費者行動インサイトを見出すというもの。
マインディアが持つオンライン購買データと、「J-MORA」が持つ複数の小売を横断したオフライン購買データを掛け合わせることで、消費者インサイトが見つかる可能性が高い。
事例では、「歯ブラシを買った人が他に何を買っているのか」をオフラインとオンラインを比較して分析。共通点と相違点を、それぞれ生成AIを使ってまとめたものだ。「おもしろいインサイトが見られた」と今村氏は語る。
「注目すべきは相違点です。オフラインでは美容やスキンケア商品を多く購入していて、オンラインでは食品や子供服の購入が多くなっていました。日常生活を思い浮かべると、食品はオフラインのほうが多そうだと考えがちです。しかし、現実は逆でした」(今村氏)
このインサイトからわかるのは、オフラインでの品揃えをそのままオンラインに持っていっても売れないということだ。
「このようなことを簡単に把握できる点が、非常に重要だと思っています」(今村氏)
最後に田中氏がリテール、メーカー、コンサル・その他のそれぞれに向けた貢献の方向性を表明した。
リテールAI研究会とマインディアのソリューションを活用することで、リテール各社の工数が削減し、本質的なビジネス活動に時間を割けるようになる。メーカーはリテール横断での分析によって、オンライン行動に対して、点ではなく面でのアプローチが可能となる。これにより、リテール市場の活発化が期待できる。すると、ソリューションを提案するコンサル企業の需要も増え、さらなる発展が見えてくる。
「私どもはデータホルダーという立場ですが、オンラインリテールの市場全体の盛り上がりに貢献できればと考えております」(田中氏)
田中氏は力強く語り、講演を終えた。店舗のオンライン化を進める一方で本質的な成長戦略に手が回っていない、より深い分析がしたいと考える企業の担当者は、「J-MORA」の情報が入手しやすいリテールAI研究会への入会を検討してみるのも良いかもしれない。