イメージ向上ではない。マーケティングの本質的な力
──その「壁」とは、具体的にどんなものなのでしょうか。
私が信じているのは、どのカテゴリー、どのブランドに対しても「行動の壁」「意識の壁」「知識の壁」があるということです。特に、既に市場があるカテゴリーのブランドでは、知識と意識の壁を取り払っていかないといけません。
──壁はどうやって取り払うのでしょうか。
まず、わかりやすくしないといけません。生活者に端的に伝わる言葉・方法を通じて、日常の中で当たり前の状態になることが大事です。
「健康は大事」と誰もが思う一方で、行動につながらないのは、そもそもどこに情報があるのかわからないし、理解できないし、面白くないと探しに行かないからです。そのような中で、マーケティングはとても大事な役割を担います。これを各ブランドでやることで、最終的にヘルスリテラシーが上がっていくと考えています。
──短期の売上と、中長期のブランディング。評価はどう捉えていらっしゃいますか。
どちらも見ます。エンドゴールを明確にするからです。どのくらいの機会があり、どれくらいの人が困り、何が原因で行動に移れないのか。インサイトを数字化し、何年で達成できるかを事業計画と一緒にプランニングして、エンドゴールを見据えます。
我々はただ、新製品を出してテレビCMを単発で打つわけではありません。壁を取り払う意識変容に取り組みつつ、最後はビジネスとして成立する領域か、スピード感を持てるかを問う。利益率が低下するような計画は、そもそも成立しません。
ここが戦略の核心です。「イメージ向上のためにやっているんですか」と問われることもありますが、そうではありません。必要なのに手に取れない生活者の壁を取り払っているだけなのです。
経営を動かすマーケターへ。「やりたいこと」に心を燃やせ
──元島さんは、4月にマーケティング本部 本部長から社長になられました。「担当者」から「経営を動かすマーケティング」へと視座を高めるために、現場のマーケターはどう動くべきだとお考えですか?
まず、ちゃんと「やりたいこと」を見つけた方がいい。今は存在しないものであっても、頭に描けることが大事です。それがないと、絶対に成功しません。目の前に見えるものだけを追いかけるマーケターにはならないでほしい。
とはいえ「キャリアで真剣にやりたいことは何ですか」と問われて即答できる人はほとんどいません。「キャリアで」と考えた瞬間に、もう壁を作ってしまっているのです。
仕事の枠を外して、人間として何が好きか、嫌いか、悲しいか、怒りを感じることは何だっけ、と一度考えてみてください。自分の感情が大きく動く瞬間が、どんなときなのかを思考していく。私自身、一冊の本が書けるほど深く向き合った時期もありました。
自分の内面に「なぜ」を問いかけては書き出すことを繰り返すと、心の動きが見えて、ある程度同じものに行きつきます。その先に「やりたいこと」が見つかるでしょう。
