【LIFULL】多様なユーザー行動に対応したマーケティング戦略
Criteoはリターゲティング広告の代名詞的存在として知られるが、近年はリターゲティングにとどまらず、新規顧客獲得からリテンションまでフルファネルでのパフォーマンス広告ソリューションを提供している。自社保有の膨大なコマースデータとAIエンジンを組み合わせることで、購買意欲の高い新規ユーザーへの精度の高いアプローチを可能にするのが特徴だ。
そして、今回登壇した3社はいずれも、リターゲティング以外のソリューションも積極活用することで大きな成果を上げている。
最初に取り組みを紹介したのは、LIFULLの金乗海氏だ。同社が運営する不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」は、物件数約617万件・加盟店舗数約3万会員と日本最大級を誇っている。
同社が抱える課題として挙げられたのが、不動産業界特有の「検討期間が長く、比較検討が複雑」というユーザー行動の特徴だ。賃貸と売買では検討期間が大きく異なり、各フェーズに応じた最適なアプローチの実現が求められている。
この課題に対し、同社が注力してきたのがタグとフィードの最適化によるレコメンド精度の向上だ。Cookie規制の強化やAI活用によるターゲティング環境の変化が進む中、エンジンに入力するデータの質を高めることが成果の最大化につながるとして、継続的な改善を進めている。
たとえば精度の高いターゲティングを実現し続けるべく、自社保有のメールアドレスデータをハッシュ化してCriteoと連携するHEM連携(※)を、昨年より開始。これにより、クロスデバイス・クロスブラウザーでのユーザー行動の認識が可能となるほか、配信機会の拡大やレコメンドのパーソナライズを実現できるようになった。
※HEM(ハッシュドEメール) メールアドレスをハッシュ化することで、Cookieに依存せず、デバイスをまたいでユーザーを識別しやすくする仕組み。メールアドレスを暗号化し、不可逆的なIDへと変換するため、安全性が確保されている。
このHEM連携により、クロスデバイスでサイトを閲覧するユーザーが45%、コンバージョンに至るユーザーも10%以上存在することが判明しており、同社ではさらなる拡大余地があると見ている。
実際にHEM連携を導入したことで、配信可能ユーザーが従来比20%増加。クッキーレス環境下においてもCV件数が30.4%増、CPAは2.2%減と、効率を維持しながら成果を大きく押し上げる結果が得られた。
AIとオフラインデータの統合で目指す「攻め」のシームレス体験
今後について金氏は、「リターゲティング中心の既存顧客維持から新規顧客獲得へのシフトを図っていきたい。そのためにもリターゲティング以外のオーディエンスを活用することで、新規顧客獲得を目指す」と語る。
つまり、リターゲティングは引き続き重要としつつも、拡大・攻めの局面でいかに効率を維持しながら成果を伸ばしていくかが課題だ。
現在活用しているブロード配信・プロスペクティング配信は初動こそ苦戦したものの、AIエンジンの学習が進むにつれリターゲティングを下回るCPAを実現しており、リターゲティング単独では限界があるという認識のもと、さらなる可能性に期待を寄せている。
「目指すのは、オンライン上の行動データだけでなく、内見予約や成約といったオフラインに近いデータも統合し、ユーザーの検討状況に完全に同期した、シームレスなコミュニケーション設計の実現です」(金氏)
クッキーレス時代を見据え、自社保有の1st PartyデータとCriteo AIエンジンを連携させることで、精度の高いターゲットオーディエンスへのアプローチを強化していくとした。
【ベルーナ】多SKUの強みをAIで最大化
続いて、ベルーナの片山和紀氏による事例紹介が行われた。ベルーナは衣・食・住・遊を豊かにする多角的な事業を展開しており、今回は売上の約半分を占める通信販売事業、中でもファッション、インナー、雑貨を扱う「ベルーナOnline Store」での取り組みが紹介された。同ストアは50・60代女性をメインターゲットとしつつ、近年はメンズブランドや30代女性向け商品も拡充している。
同社が抱える課題は主に3つだ。1つ目は商品点数が非常に多く、興味やニーズが多様なこと。2つ目は閲覧やカート投入後の離脱ポイントが多いこと。3つ目はGoogleやMetaでは届きづらいセグメントが存在することである。
1つ目の課題に対しては、商品数の多さが逆にCriteoのAI学習を促進する強みとして機能しており、リターゲティングで安定した成果を上げつつ、その基盤を土台に新規獲得施策へも展開している。
2つ目のカート離脱への対応としては、ダイナミックリターゲティングを活用しカート放棄者へのセール告知などバナーで購買を後押ししている。配信するクリエイティブについては、AIがユーザーの離脱タイミングや閲覧頻度、購買行動を判別し、配信頻度や内容を自動で最適化しているという。
3つ目については、Criteoがインターネットユーザーの92.6%にリーチ可能な配信環境を持ち、GoogleやMetaでカバーしきれない層へのアプローチを実現している。
優良顧客特化の配信でROAS36%改善
具体的な施策としてまず紹介されたのが、Criteoのプレディクティブオーディエンスを活用した購買意欲の高い「優良顧客」に特化した配信だ。
従来は既存顧客向けのキャンペーンを一本化して運用していたが、優良顧客に特化した配信を切り出すことで受注金額が前年比136.4%増、ROASも36%改善した。片山氏は「行き詰まりを感じていた時期に生まれた施策だっただけに、担当者として思い入れの深い結果となった」と振り返った。
次に紹介されたのが、自社データを活用した54歳以下へのリーチ拡張だ。Criteoを用いると、購入率の高い層である50・60代女性への配信に最適化されやすくなる。しかし、サイト全体では30・40代の購入者も一定数存在していた。
そこで、HEM連携によりCriteoにインポートした自社データをシードとして活用し、54歳以下を対象とした配信を意図的に実施。ROASを維持したまま受注金額が24.6%増と、規模拡張と顧客層の活性化を同時に実現した。AIによる最適化を基盤としつつ、人間の判断で拡張するアプローチの好例といえるだろう。
新規獲得に向けては、ルックアライク配信にも取り組んでいる。従来は購入者や会員ランクの高い顧客データをもとに類似ユーザーへ配信していたが、AIの学習精度を高めるべく、男女別・獲得経路別にデータを細分化して渡す形に改善を進めているところだという。
こうした取り組みを加速させたきっかけの1つが、1st Partyデータのマッチ率の高さだ。自社から渡したデータとCriteo側で判別できるデータの一致率を管理画面で確認した際、その高さに片山氏自身が衝撃を受けたといい、自社データの活用可能性への期待がさらに膨らんでいる。
「今後は、自社データを活用した配信の拡張と、ターゲットに合わせたオーディエンス設計とクリエイティブの磨き上げの2点に特に力を入れていきたいと考えています」(片山氏)
【求人ボックス】 新規層へのアプローチを強化しCV数は6.5倍に
最後に取り組みを紹介したのは、カカクコムの越川恭子氏だ。企業と求職者をつなぐプラットフォーム「求人ボックス」は、2,000万件超の求人情報を掲載し、月間ユーザー数は1,500万人(2026年3月時点)を超える規模に成長している。
Criteoとの取り組みは、まずダイナミックリターゲティングで土台を構築するところから始まった。豊富な求人情報を抱える求人ボックスはCriteoとの相性が良く、効率を保ちながら配信ボリュームを確保できる媒体として位置づけられている。
一定の基盤が整った後は、認知・検討層(ミドル・ローワーファネル)へのアプローチを本格化。フィード数を数十万件から数百万件へと拡充するとともに、リターゲティング以外のオーディエンスを積極的にテストした結果、現在ではリターゲティング以外への配信が大きな割合を占めるまでに拡大している。
また、タグ設計の見直しも実施した結果、CV件数を前年比6.5倍に伸ばすことに成功した。
『Criteo=リターゲティング』ではない
現段階の施策は、最終KPIに向けた最適化、クリエイティブ最適化、そして1st Partyデータの本格活用の3点だ。
最終KPIに向けた最適化については、タグ情報だけをエンジンに返すのではなく、自社データを学習させることで事業の最終ゴールに向けた配信を実現したい考えだ。クリエイティブについては、リターゲティングのようにユーザー一人ひとりのインテントに合わせた出し分けを理想として、パーソナライズの精度を高めていく方針を示した。
1st Partyデータの活用はこれら両方の取り組みに直結するものとして、整備を急ぎたいと語った。
最後に越川氏は、「Criteoはリターゲティングだけではない」と改めて強調した。リターゲティングは引き続き最大化していくべき施策だが、インテントが顕在化しているにもかかわらずまだサイトに誘導できていないユーザーへのアプローチも可能であり、そのユーザー層をいかに効率よく獲得していくかという視点を常に持ち続けることが重要だと語った。
「CriteoのAIは、与えられた情報をもとに、適切なユーザーに適切な広告を届けてくれる非常に賢いエンジンだと思います。だからこそ、一人ひとりのユーザーに対して嫌われないコミュニケーション、つまりOne to Oneのパーソナライズされたメッセージを届けられる状態を目指して、必要なデータを必要なタイミングでインプットし続けることを今後も取り組んでいきたいです」(越川氏)
司会の福島氏は「Criteoがリターゲティング以外の施策の提供を開始した頃は、『Criteo=リターゲティング』という認識が根強く、なかなか活用していただけないこともありました」と振り返る。
「そんな背景があっただけに、今回皆さまがそろって『Criteoはリターゲティングだけではない』と語ってくださったことへの喜びと感謝を伝えたいです。お客様自身の言葉こそが最大の証明だと思います」と、セッションを締めくくった。

