【実装例】ChatGPT広告・対話型バナー・AI運用支援
購買シグナルとAIを直接つなぐ「MCP」
その1つが、Criteoが独自開発したMCP(Model Context Protocol)だ。MCPは、AIショッピングアシスタントをリアルタイムの在庫・購買シグナルへ接続する仕組みで、共通のルールを用いることで、複数のAIエージェントと接続する際の個別開発を最小限に抑えることができる。
たとえばユーザーが「週末のキャンプに最適なテントを探して」と入力すると、在庫・価格・購買シグナルがMCP経由で瞬時にAIへ返り、単なる情報検索が「購入可能なレコメンド」に変わる。自社でAIショッピングアシスタントをゼロから構築しなくても、既存のレコメンドエンジンをAIとの対話に接続できる点が、実装上の大きなメリットだ。
この取り組みの一環として、CriteoはOpenAIの広告パイロットに統合される最初の広告テクノロジーパートナーに選ばれた。「OpenAIのChatGPTにおける広告パイロットへの参画には、私自身も驚きました。早く皆様に進展をお伝えしたいと思っています」と池田氏。
同氏がイベントで語った「進展」は早くも現実のものとなり、2026年6月には日本国内でも「ChatGPT広告」の本格的な配信がスタートした。
その場で提案が変化し続ける「対話型バナー広告」
2つ目が、対話型バナー広告だ。広告は「見るもの」から「対話し、リアルタイムで提案を受けるもの」へ進化する。ユーザーはバナーをクリックして遷移する前に、その場でAIエージェントと対話できる。「もう少し暗い色で、予算1万円以下のものはある?」といった、その瞬間の希望に応じて、新しい提案が繰り返される。
「UI上ではわかりませんが、この会話自体が在庫と購買シグナルに連携しています。単なるチャットではなく、広告がリアルタイムに最適化され続けるインターフェースです」(池田氏)。広告主にとっては、バナーが「ランディングページの前室」として機能し、遷移前にニーズを絞り込み、購買意欲を高めた状態でサイトに送客できる仕組みだ。
AIとの対話でオーディエンスを設計する「意思決定支援」
3つ目が、運用者の意思決定支援だ。これまで人が複数の条件を組み合わせ、試行錯誤してきたオーディエンス設計を、AIとの対話で行えるようにする。
たとえば「過去30日でカート落ちしたユーザーのなかで、LTVが最も高くなりそうなセグメントを作って」と指示すれば、AIがセグメントを生成する。さらに、「『週末に動画を視聴する層』を掛け合わせると、CPAが20%改善する見込みがあります。追加しますか?」とまで提案してくる。
これまで「勘と経験」に頼る部分が大きかったオーディエンス設計が、データに基づく提案ベースの対話作業に変わる。「媒体運用の効率化だけではなく、意思決定そのものを支援する方向へ進めています」と池田氏は語る。
エージェンティック時代を勝ち抜く4つのアクション
講演の最後に池田氏は、これから重要になるポイントを整理した。鍵は、AI向けの特別な施策を作ることだけではなく、土台を整えることにある。
【1】商品情報を、AIによる検索・発見に対応できるよう最適化する
特別な施策の前に、まずフィードやタグの整備から。商品情報(SKU、価格、在庫状況)のデータ品質を高め、AIが理解し、レコメンドしやすい状態を作る。何をAIに学習させるかによって、結果は大きく変わる。
【2】顧客ロイヤルティ維持のために、オンサイト体験を強化する
オンサイト体験やCRMも含めて、顧客との関係を深める。1st Partyデータを蓄え、サイト内のUXを磨くことが、AI時代の差別化につながる。
【3】コマースデータを活用し、関連性の高いレコメンドを実現する
保有するコマースデータを起点に、顧客一人ひとりに最適な商品を提案する。興味関心ベースではなく、実際の購買行動のシグナルを生かす発想が、購買に結びつく精度を生む。
【4】信頼できるパートナーと、試行を重ねて前に進む
「市場自体はまだ発展途上です。だからこそ、ここにいる皆様、そして信頼できるパートナーと試行錯誤しながら前に進めていくことが重要になります」。池田氏はそう締めくくった。
「正解」はまだ誰も持っていない。信頼できるパートナーと小さく試し、学びながら前に進む姿勢が、この時期は最も重要だ。

