従来のBeaconには、致命的な欠点があった
DSPやDMPを軸に、Web広告事業を手掛けるアドインテ。最近では「AIBeacon(エーアイビーコン)」を活用した位置情報データサービスも展開している。同社がBeacon開発に至ったのは、顧客からのある要望がきっかけだった。とあるメーカーから「Web広告をクリックしたユーザーが、実際どれだけ来店しているのかを知りたい」というリクエストを受けたのだ。
「リクエストを頂いたのは約5年前。当時はO2OやOMOという言葉もまだ浸透しておらず、どう実現すればいいのかわからなかったため、様々な事例を調査してみました。調査を進めていくと、海外でBeaconを活用したO2O事例がいくつか見つかったので、当社でもBeaconをテスト導入してみたんです。ただ、当時はまったく活用できませんでした」(稲森氏)
Beaconは基本的にBluetoothを利用する位置特定技術のため、検知するにはデバイスのBluetoothがオンになっている必要があるうえ、専用アプリが必要だった。つまり、ユーザーが持つスマホのBluetoothがオンの状態で、なおかつ専用アプリがインストールされている状態でなければ、検知できなかったのだ。
「大手小売店でBeaconをテスト導入し、来店者数を計測してみました。その結果、1日に何千人も来店する店舗なのに、Beacon上では数人という計測結果でした。これではビジネスに活用することはできないな、と。そこで、『使えるBeacon』を自分たちで開発しようと決意したのです」(稲森氏)
次世代型Beacon「AIBeacon」を開発
その後、開発期間を経て2015年5月にリリースされたAIBeaconは、「Wi-Fiでも検知可能」「専用アプリ不要」と、従来のBeaconが持つ欠点をクリアにしたものだった。Wi-Fi対応にしたことで、計測可能範囲は半径数十メートルからMAXで約180mになり、個人情報を取得することなく、匿名のアクセス情報も取得できるようになった。取得した情報はアドインテDMPに蓄積され、様々なマーケティング施策に活用することができる。
稲森氏は、複数の導入事例を紹介しながら、AIBeaconの強みを説明する。
「たとえば、小売業の店舗にAIBeaconを設置したとします。そうすると、来店客がどのように行動しているのかを、分析することができるようになります。さらに、数多くいる来店客のなかから、『高額決済者』『リピーター』というように、ユーザー属性を細分化して分析することも可能です。彼らの行動を分析することで、より購入が起きやすくなるような店舗の導線設計にする、といった施策が打てるようになるのです」(稲森氏)
ある小売チェーン店ではAIBeaconを活用し、店舗ごとにどれだけ顧客属性が異なるのかを分析し、ローカライズの参考情報を得ているという。また、AIBeaconは計測可能範囲が広いため、店舗内に置くだけで店舗周辺の通りにおける通行状況も確認できる。またGPS情報と掛け合わせることで、自社の顧客がどの程度競合に流れているのかも把握することが可能だという。