売上よりも顧客の反応がわかる数値をKPIに
――来場者やアクティブ会員の増加から、ファンに向けたマーケティングがしっかりと成果を出していることがわかります。こうした施策の一つひとつについて、どのような評価指標を見ていますか。
評価指標の一つに、NPS(ネットプロモータースコア)を置いています。イベントは、そもそもの来場者数や試合の内容、天気などの外部要因なども踏まえると、定量評価がとても難しい領域です。そこで、NPSのデータと来場者アンケート、物販など球場内の行動データを紐付けて、分析を行っています。
売上も重要ですが、お客様の反応がわかる数値をKPIにしていくことも重要と考えています。私たちのようなファンビジネスでは、売上をKPIにし、ダイナミックプライシング(需要と供給に合わせて、販売単価を最適化する手法)などを用いて、チケットを過剰に高く売ることも可能でしょう。しかし単発のイベントと違って野球は試合数が多く、長期的に何度も来ていただくことが収益の要となるビジネスですので、やはり「ファンがどう思うか」を無視することは長い目で見てプラスにならないはずです。
またNPSに注目しているのは、エンゲージメントの高いファンが、新しいお客様を連れてきてくれるつながり作りを強化していきたいからです。ファンクラブ会員は、会員価格でチケットを6枚まで購入できますから、「一緒に野球を見に行こう」と誘いやすくなっています。こうした動きがもっと増えていけば、プロモーションコストを抑えることにもつながり、その抑えた分を、お客様に喜んでいただくための施策に使うことができるようになります。
――最後に、今後のライオンズの展望をお聞かせください。
ライオンズとしては、お客様からいただいた収益を施設やチームへ還元することで、お客様にさらに楽しんでいただく好循環を生み出していくことが目標です。球場が満員ですと、選手のモチベーションも上がりますし、ファンファーストであることは、球団のブランディングにもつながっていきます。西武ライオンズは、本拠地のある所沢、そして西武鉄道沿線にお住まいの方々に愛されることが、存在意義の一つです。中長期的に地域の皆さまに足を運んでいただく関係性を、これからも大切にしていきます。
マーケティングについては、繰り返しになりますが、お客様とのより良いコミュニケーションが最も大切にすべき部分です。ファンクラブ会員の中にも、ライオンズが生きがいで全試合行きますという方や、家族のレジャーとして月に1回応援にいらっしゃる方など、いろいろな姿があります。当然、求めるコンテンツもチャネルも異なっているはずです。私たちがやるべきことは、お客様が求める情報を、オンライン、オフライン問わず、適した方法でお届けすること。
コミュニケーションなしでは、ファンビジネスは成り立ちません。より精緻なメッセージング、1to1マーケティングの実行のためにも、デジタル化は進めていくべきであり、特にアクティブ会員化とお客様のID情報の取得は重要です。引き続き注力していきたいと思います。