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リテールメディアの「可能性」と「課題点」 セブン-イレブン・ジャパンの事例から紐解く

リテールメディアへの出稿費用をどこから捻出するのかが問題

 稲森氏は「リテールメディアが広告なのか販促なのか?」という議論に決着が着いておらず、どの部門から予算を捻出すれば良いかわからず困っているメーカーも少なくないと指摘。それに対して、杉浦氏は次のように意見を述べた。

 「我々がリテールメディアを始めた頃は、メーカーさんのマーケティング部から『広告費』として費用をいただきたいと考えていました。しかし、小売一社のメディアだけに広告を出稿しても、普段からその小売企業の店舗を利用している人以外にアプローチすることは難しいでしょう。つまり、広告を出す媒体としては、インパクトが弱く見えてしまいます。この事業において最も大事なことは、『リテールメディア』という言葉をバズワードで終わらせないことです。当然、自社のオウンドメディアを大切にしていきたい気持ちはあります。しかし、リテールメディアを最短で定着させるには、業界の垣根を越えた企業間でのデータ連携が必要かもしれません」(杉浦氏)

 リテールメディアを推進するための社内体制の重要性についても杉浦氏は言及した。セブン-イレブン・ジャパンでは、「マーケティング本部」の下に「リテールメディア推進部」を配置している。マーケティング本部と同じく「商品戦略本部」に属している「商品本部」は、売れる商品を良い条件で仕入れるためにメーカーと相対するバイヤーのポジションだ。

セブン-イレブン・ジャパンの組織体制

 リテールメディア推進部が商品本部と大きく異なるスタンスでメーカーと仕事をしてしまった場合、メーカーがセブン-イレブン・ジャパン社内の連携に不信感と不安を抱くことになる。だからこそ、社内連携が非常に重要なのだという。

 その点、商品戦略本部の下にリテールメディア推進部とプロモーション部のほか、アプリを運営するチームや商品部が配置された現在の体制は「意識して連携を取ることさえできれば大きなメリットになり得る」と杉浦氏は説明した。

 「同じ商品戦略本部に所属しているからこそ、商品本部に対してリテールメディアの進捗を共有したり、逆に他部門にリテールメディア推進部では取引のないメーカーを紹介いただいたりできます。このような紹介は、社内で情報共有ができていることのアピールにもつながるので、メーカーの皆様にやりやすさや安心感を抱いてもらえます」(杉浦氏)

リテールメディアが小売とメーカーのWin-Winの礎に

 多くの広告主が気にするであろう、「リテールメディアの活用によるメーカー側のメリット」について杉浦氏はどのように考えているのだろうか。

 「特に当社のようなアプリを通じた広告は、販促と連動しているため最終的な購買につながりやすいという特徴があります。商品が売れるというのは、当社の商品部にとってもメーカーにとってもうれしいことです。リテールメディアは小売企業とメーカーがWin-Winになるための礎だと考えています。現在は、事例を積み重ねていくことで、リテールメディアの活用が購買につながりやすいという事実を少しずつご理解いただいている最中です」(杉浦氏)

 従来のデジタル広告では、媒体側やプラットフォームが保有しているデータを基にセグメントを設定する必要があり、広告を配信した後に、リアル店舗で購買につながったかの計測は不可能だったという。しかし、リテールメディアでは、小売企業が保有する購買データや会員データなど精緻なデータを活用してターゲティングと広告配信ができ、その後の購買行動変化まで分析することが可能になる。この点を広告主側から見たリテールメディアの良さだと稲森氏は述べた。

次のページ
広告と販促を連動させ購買までつなげる

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社アドインテ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/01/26 11:30 https://markezine.jp/article/detail/44256

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