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長祐氏と考える顧客理解と顧客戦略

顧客視点で解釈し、ニーズの先を開拓──「5年後のスタンダードになる」三井住友カードのマーケティング

 デジタル時代への突入により、コミュニケーションが多様化する中、マーケティングの手法も乱立している。一体、何が変わったのか、また変わらない本質は何なのか。本連載では、P&Gジャパン執行役員を経て、現在M-Force代表を務める長氏が、経営者やCMOなど、マーケター業界の最前線で活躍する人物を訪ね、「施策(HOW)の効果を飛躍的に伸ばすWHO/WHATの設計方法」についてディスカッションを行い、「顧客戦略」の考え方や実践例などを探っていく。最終回のゲストは、三井住友カード株式会社 マーケティング本部 本部長補佐の伊藤さん。「Olive」や「三井住友カード ナンバーレス(NL)」など、革新的なサービスを生み出し続ける同社の取り組みをうかがった。

プロジェクトごとに柔軟にチームを編成し、連携を図るマーケティング組織

長:今回は、三井住友カードの伊藤 亮佑さんをゲストにお迎えしました。最初にマーケティング組織やそのミッションについてお聞かせください。

伊藤:私が属するマーケティング本部は、個人のお客様向けの企画全般を担当しています。具体的には、プロモーション活動やアプリ・Web開発はもちろんのこと、データ戦略の立案、コールセンターの品質向上、さらには商品開発まで、お客様との関わりにおける入口から出口までを一貫して担当しています。

三井住友カード株式会社 マーケティング本部 本部長補佐 伊藤 亮佑(いとう・りょうすけ)氏<br />大手EC、通信キャリアでのWebサービス企画、デジタルマーケティング担当などを経て、2016年に三井住友銀行入行。2018年より三井住友カード兼務。グループキャッシュレス戦略に基づく商品・サービス企画開発、プロモーションなどに従事し、構想当初よりOliveのサービス企画開発プロジェクトに参画。2024年4月より現職。
三井住友カード株式会社 マーケティング本部 本部長補佐 伊藤 亮佑氏
大手EC、通信キャリアでのWebサービス企画、デジタルマーケティング担当などを経て、2016年に三井住友銀行入行。2018年より三井住友カード兼務。グループキャッシュレス戦略に基づく商品・サービス企画開発、プロモーションなどに従事し、構想当初よりOliveのサービス企画開発プロジェクトに参画。2024年4月より現職。

伊藤:組織運営の特徴として、約3年前から「アジャイル」と呼ばれる手法を導入しています。これは部単位での業務遂行ではなく、プロジェクトごとに柔軟にチームを編成し、連携を図る方式です。この体制における最大の強みは、個々のお客様に対して、商品開発からプロモーションまでを本部一体となって一気通貫で提供できる点にあります。

 私が元々入行したのは三井住友銀行で、当行にマーケティング組織ができたのは、私が入社する前の2015年のことです。以前は自然とお客様に口座を開設していただける状況で、しかもそのほとんどが店頭で行われていました。そのため、マーケティングの概念はほとんど必要とされていなかったのです。しかし、現在三井住友カードの社長である大西が、銀行のリテール担当専務だった際に、マーケティングの重要性を認識し、専門部署を設立しました。手探りの状態から、徐々に体制を整えてきた形です。

革新的なサービスが生まれる背景は?

長:三井住友カードの商品・サービスを顧客に選んでもらうために、重要視している点を教えてください。

伊藤:リテールの総合力でしょうか。SMBCグループは銀行事業、カード事業、消費者金融事業など大規模な事業基盤を有しています。そのため戦略としては、リテール金融の総合力を活かした展開を主軸に据えています。

長:総合力の結果、生み出されたのが手軽に様々なことをできる「Olive(オリーブ)」のようなサービスなのですね。

伊藤:そうですね。「Olive」を通じて、様々な金融商品の申し込みや一元管理を簡単に行える顧客体験を提供することで、金融商品全般における心理的な障壁を、クレジットカード並みに引き下げることを目指しています。

長:三井住友カードといえば、「Olive」のほかにも「三井住友カード ナンバーレス(NL)」など、革新的な商品を生み出し続けている印象があります。一歩先の未来に目線を持って商品を作るため、意識していることはありますか。

伊藤:調査結果に頼り過ぎないことでしょうか。たとえば「三井住友カード ナンバーレス(NL)」の場合、当初の調査では、カードに番号を印字することが「常識」という意見が大勢を占めていました。

 しかし、実際の利用シーンを深く分析したところ、カード番号が必要となるのは主にECサイトでの買い物時であると判明。スマートフォンを使用していることが明らかになりました。ディスカッションを重ねた結果、カード番号をアプリで確認しコピーできる機能を実装する方が、むしろ利便性が高いという結論に至りました。

長:顧客調査に加えて、仮説に基づく顧客の行動分析を行うことで、革新的な商品アイデアにつながる「独自の示唆」を得たのですね。

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「顧客視点が足りない」アイデアは、やり直す

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この記事の著者

⻑ 祐(チョウ タスク)

 東京大学大学院卒業後、P&G入社。ジレット、ジョイ、SK-II、BRAUNなど多岐に渡るブランドマネジメントを行い、P&Gジャパン執行役員に就任。2019年にM-Force株式会社代表取締役に就任し、顧客起点マーケティング「9segs®」の運用ツール「9segs®analyzer」の開発・導入・運用支援を行う。

https://mforce.jp/
https://markezine.jp/article/detail/34425

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/20 08:30 https://markezine.jp/article/detail/47344

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