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マーケティングに「Trait(性格特性)」の新概念!電通グループの新ソリューション「BPTS」とは

 電通と電通デジタルが開発した、心理学理論とAI・統計解析で性格特性を可視化し、分析・配信に活用する新マーケティングソリューション「BPTS」。属性データや行動データだけでは見えなかったユーザーの内面に「Trait(性格特性)」という新たな切り口から迫ることで、これまでにないアプローチが可能になるという。このTraitという新視点によって何が可視化できるようになり、実際のマーケティング施策にどう活かせるのか。本記事ではBPTSの開発と活用支援に携わる電通の大下氏、針原氏、田村氏にインタビュー。概要や特徴、実現できる具体的なアプローチについて詳しく話を聞いた。

記事の最後に、「BPTS」性格特性8尺度の診断を体験できる簡易ワークシート付き!

本ソリューションは個人の性格を診断する目的での提供を現時点では行っておりませんが、読者向けの簡易診断ワークシートをご用意しました。
BPTSの考え方とTrait(性格特性)の活用イメージを、ぜひご体験ください。

「BPTS」とは?新たなセグメントの軸となるのは「Trait(性格特性)」

MarkeZine編集部(以下、MZ):本日は、電通グループの新たなソリューション「BPTS」についてうかがっていきます。そもそも、BPTSとはどのようなものなのでしょうか?

大下:BPTSは、顧客の「Personality Trait(性格特性:以下、Trait)」の心理学理論を基にした調査データとAI・統計モデルでTraitごとのグループを可視化するソリューションです。可視化したTraitは、顧客理解から広告クリエイティブの制作、配信に活用できます。

 名称は「Big5」「Personality」「Trait」「Segment」の頭文字からとっています。「Big5」はパーソナリティ心理学で科学的根拠の高い「Big5理論」に由来し、「開放性・誠実性・外向性・協調性・否定的情動性」の5尺度に、消費行動との関連を捉えるために独自設計した「獲得特性・承認特性・勇気特性」の3尺度を加えた計8尺度を基盤として採用しています。

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大下:「Personality Trait」は、パーソナリティ心理学の〈特性論〉に基づいており、尺度ごとに高い/低いの特性の傾向を測ります。これは〈類型論〉(「あなたはAタイプ」「Bタイプ」のように特定カテゴリーに当てはめる考え方)とは異なります。そして、プライバシーが保護された分析環境「データクリーンルーム」を活用して、顧客グループ単位で「Segment」化して傾向分析や配信などを可能にしています。

株式会社電通 データ・テクノロジーセンター プラットフォーマーデータ1部 シニアアナリスト 大下 酬人氏
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター プラットフォーマーデータ1部 シニアアナリスト 大下 酬人氏

針原:開発にあたっては、パーソナリティ心理学を専門とする小塩 真司教授(早稲田大学)に監修いただいており、これまでの実験や研究に基づいた理論のもと調査・データ収集を行いました。また、10万人規模の大規模調査データとAI・統計解析により、実運用可能なスケールと精度を両立させています。

なぜ、性格特性なのか?

MZ:性格特性という切り口に着目した背景を教えてください。

針原:これまで顧客理解を深める手法は、「Who(どんな人か)」のデモグラフィックデータや「What(何をしたか)」という過去の履歴をもとにした行動データを用いた分析が主軸でした。ここにTraitという第3の軸を重ねることで、たとえば新商品をすぐ試す人は「開放性」が高い傾向にある、ポイントを着実に貯める人は「誠実性」が高い傾向にあるといったように、生活者の行動の背景にある心理「Why(なぜその行動をとったのか)」に迫ることができます。

株式会社電通 データ・テクノロジーセンター プラットフォーマーデータ1部 アナリスト 針原 千尋氏
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター プラットフォーマーデータ1部 アナリスト 針原 千尋氏

大下:この「Why(なぜその行動をとったのか)」に迫るための視点が、Traitです。価値観が多様化する中、属性データや行動データはいずれも重要ですが、それぞれに捉えきれない部分があります。

 属性データは、「30代・男性・都内在住」といった「どんな人か」の輪郭を示しますが、変化を好むのか、安定を重視するのかといった価値観まではわかりません。一方、閲覧や購買などの行動データは、「何をしたか」という過去の事実であり、それだけで将来の行動を保証するものではなく、なぜその行動をとったのかまではわかりません。同じ属性や関心を持つ方々も、内側にある価値観は千差万別であり、それらが一様に束ねられてしまうのはもったいないことです。

MZ:確かに、「30代男性」という属性や「飲料の広告をクリックした」行動1つとっても、その背景や内面にある動機をひとくくりにすることは難しいですね。

大下:その通りです。たとえば、接客のプロフェッショナルは年齢や性別だけでなく、表情や話し方といった様々な要素から適切なサービスを提供しています。マーケティングにおいても本来は、顧客の内面や価値観に合わせてコミュニケーションを変えていくべきです。

 近年、データクリーンルームや分析手法の発展により、大規模な行動データと調査データをプライバシーに配慮しながら掛け合わせ、AIで解析できるようになりました。こうした技術環境の進展も、BPTS開発の背景にあります。

「○○タイプ診断」とは違う?BPTSの正しい活用方法

MZ:BPTSでは性格特性を高低で測るとのことですが、高ければ高いほど良い、ということなのでしょうか?

針原:いいえ。BPTSでは各Traitの「高い/低い」を測りますが、高低に優劣はなく、どちらもマーケティング上の意味を持ちます。

「BPTS」の8尺度と高低による価値観の傾向と訴求仮説のフレームワーク(クリックして拡大)

針原:たとえば「開放性」が高い層と低い層では、響きやすい訴求点が異なるのではないか、という仮説を立てられます。商材によって影響度が高いTraitは異なりますし、同じ商材の中でも、狙う顧客層のTrait次第で訴求仮説も変わります。こうした仮説を実際の反応データで検証し、商材と狙う顧客層の組み合わせから最も反応が良いTraitを発見することで、見込み層の絞り込みや次の戦略策定に活かすことができます。

 また、BPTSは個人にタイプを当てはめて解釈する〈類型論〉ではなく、特性ごとに相対的な高低を顧客群の傾向として捉える〈特性論〉を採用しています。尺度ごとに連続値で捉えるため、顧客群の傾向を詳細に読み解けるのが特性論の強みです。

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MZ:昨今よく見かける「○○タイプ診断」のような人の性格をタイプごとに捉える形ではなく、8尺度それぞれの傾向を見てセグメント化していくのがBPTSの考え方なのですね。

BPTSではどのように顧客を捉えるのか

MZ:性格特性は、実際にはどのように測るのでしょうか。

田村:BPTSでは、「あなたは開放性を持っていますか」といった直接的な質問ではなく、心理学的な知見に基づいて設計された約100の設問から、各Traitの高低を導き出しています。

 より精緻に捉えられている理由は、そのTraitを「持っている」「持っていない」という2値的な分類ではなく、特性を連続値として算出している点にあります。連続値として捉えることで、「比較的高い/中程度/比較的低い」といった心理的な強弱や、8尺度それぞれのバランスから、一人ひとり異なる性格の傾向を表現して把握できます。

株式会社電通 データ・テクノロジーセンターグローバル開発部 シニアアナリスト 田村 勇人氏
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター グローバル開発部 シニアアナリスト 田村 勇人氏

田村:特性値の算出をする際は、たとえば5段階評価の設問において、各回答の数値を単純に足し合わせたり、全体を標準化したりする計算はしません。「回答が偏りやすい設問か」「答えやすい設問か」といった、各設問の特徴を加味した独自の計算アルゴリズムを採用しています。

 これにより、一人ひとりに対してより適切に評価された特性値が算出され、単純な合算による評価よりも総合的に心理特性を捉えられる点が、BPTSの特徴であり強みです。

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BPTSで実現する、性格特性に応じたアプローチ

MZ:BPTSで、生活者の関心や動機をより解像度高く捉えられることがわかりました。では、企業はBPTSをどのように活用でき、どういったアプローチが可能となるのでしょうか。

田村:BPTSは、従来の属性や行動データを活用する既存の手法に加えることで「なぜその顧客が行動したのか」という背景への理解を深め、ターゲットや訴求内容に関する仮説の精度を高めて施策の最適化につなげることができます。

 アプローチとしては、まず、クライアントが保有する広告データやCV・会員情報などのファーストパーティデータを、データクリーンルーム環境下で10万人調査の心理特性データと掛け合わせ、「CVとどのTraitが関係しているか」を分析できます。

 自社データを持たないクライアントも、プラットフォーム事業者が保有する検索・サイト来訪データを起点に分析が可能です。これにより、「優良顧客に共通するTrait」や、「どのメッセージがどのようなTraitに響きそうか」といった仮説を導き、配信設計や訴求軸の検討に落とし込むことができます。

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針原:たとえば、CVした顧客群を分析した結果、「勇気特性」が高く「外向性」が低い層でCV効率が高いとわかれば、そのようなTraitを持つ既存会員を抽出し、広告配信の対象にできます。さらに、同じ商品・サービスでも、Traitに合わせて訴求内容を変えることが重要です。「承認特性」が高い層にはプレミアム感のある特別優待を、「獲得特性」が高いメリット重視層にはお得なポイント還元を提示する、といったクリエイティブ設計が考えられます。

 このように、BPTSを活用することで、従来の属性データや行動データだけでは捉えにくかったTraitの違いを、配信設計やクリエイティブの出し分けに取り入れることができます。

田村:また、LINEヤフーの検索・興味関心データなどを説明変数とした機械学習モデルを構築することで、調査対象の10万人にとどまらず、LINEヤフーの全ユーザーにTraitの特性値を付与することが可能です。つまり、検索履歴や行動データをもとに、調査未回答者に対してもTraitを予測できるのです。この仕組みにより、自社データをまだ十分に蓄積できていないクライアントにも幅広く活用いただけるソリューションとなっています。

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検証フローの精度を高め「PSDCA」実現のカギに

MZ:最後に、今後BPTSをどう展開していくのかお聞かせください。

針原:私たちが目指すのは、従来の「どんな人か」を捉える属性の視点や、「何をしたか」を捉える行動の視点に加えて、「なぜその行動をとるのか」に迫るTraitの視点を組み合わせ、顧客の価値観に寄り添ったコミュニケーションを実現することです。それによって、顧客とのより良い関係を築きながら、マーケティング施策の効果を高めていきたいと考えています。BPTSを現場の仮説設計や意思決定に適切に活用いただけるよう、活用の幅をさらに広げていきたいです。

田村:今後取り組んでいきたいこととして、2点考えています。1点目は、プラットフォームの拡張です。現在LINEヤフーで実現しているTraitの特性値付与を、各プラットフォームのユーザーにも実現していきたいですね。媒体を横断してBPTSを使えるようになれば、クライアントはTraitという軸で、複数の広告戦略を一貫した視点で描けるようになると考えています。

 2点目は、経年変化の分析です。機械学習モデルは基本的に、任意の時点における特性値を算出するものです。そこで、たとえばある人物の2年前と現在の8尺度の特性値を比較し、Traitがどのように変化しているかを分析することも可能です。データを時系列で保持していくことができれば、Traitの変化の有無を含めた分析ができるようになり、顧客をより深く理解することにつながると考えています。

大下:現時点では、BPTSは広告分析や配信での活用が中心ですが、今後は活用領域を企画フェーズにも広げていきたいと考えています。具体的には、新商品開発におけるターゲット設計やペルソナ構築、訴求コンセプトの立案などにTraitの視点を取り入れ、施策実行前の仮説作りから活用できるようにしていきます。

 こうした企画フェーズへの展開と親和性が高いのが、電通グループが新たなマーケティングフレームワークとして提唱する「PSDCAモデル」です。これは、従来のPDCAサイクルに「S(シミュレーション)」を加え、AIを使って施策実行前に生活者や市場の反応を検証する考え方です。BPTSが提供するTraitの視点を活かし、このシミュレーションの精度を高めていきたいと考えています。

MZ:業界や企業規模問わず、様々な場面での活用が期待できそうですね。本日はありがとうございました。

「BPTS」簡易診断ワークシート(クリックして拡大)

「BPTS」簡易診断ワークシートの診断方法

8つの性格特性ごとに3問ずつ、直感でA・B・Cを選ぶだけ。各尺度でAが多ければ低い特性(Low)、Bが多ければ高い特性(High)の傾向を示します。

試してみると、尺度ごとに結果はバラバラになるはず。それこそが、人を1つのタイプに収めず特性ごとに解釈する、BPTSの考え方です。

※簡易版のため、特性論のイメージをご理解いただく目的で分かりやすく簡単な構成にしており、実際のBPTSとは設問・算出方法が異なります。

「BPTS」簡易診断ワークシートの結果(クリックして拡大)
「BPTS」プロジェクトメンバー
「BPTS」プロジェクトメンバー
株式会社電通:大下 酬人、針原 千尋、田村 勇人、築地 佑弥、新川 祥史、福田 真大、甘利 早、浦口 果歩、田中 悠祐、野田 凌佑
株式会社電通デジタル:佐藤 雄飛、坂戸 美輝
株式会社電通クリエイティブピクチャーズ:駒本 幾子、藤井 佳代子、佐々木 千穂、夏井 一紗、高橋 伸也
株式会社電通マクロミルインサイト:今泉 直史、阿部 駿、及川 澄香、松本 早弥香

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通デジタル

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/09/09 10:30 https://markezine.jp/article/detail/50882