次の20年のキーワード「マーケティング・オーケストレーション」とは
MZ:組織のナレッジを引き上げたその先、これからの20年で日本企業が目指すべき「理想のマーケティングの姿」とはどのようなものでしょうか。庭山さんの著書『儲けの科学 The B2B Marketing』(日経BP)にも書かれていた「マーケティング・オーケストレーション」が、キーワードになりそうですね。
庭山:実は、この「マーケティング・オーケストレーション」という言葉は、今アメリカをはじめグローバルで非常に流行っており、だいたい15年周期で巡ってくる言葉なんです。私が1990年に会社を設立する直前、海外カンファレンスに頻繁に出ていた頃にも、登壇者たちがこの言葉を使っていました。
当時、カンファレンスで隣にいた人に「マーケティング・オーケストレーションって何?」と聞いたら、こう教えてくれたんです。「今までは、1人か2人の優れた天才マーケティングプランナーがすべてを決めていた。けれど、これからはそれでは勝てない。データ分析、コンテンツライター、イベントオーガナイザーなど、それぞれの専門家が、あたかもオーケストラが指揮者の棒と譜面(戦略)に合わせて交響曲(シンフォニー)を奏でるようにマーケティングをしなければ勝てない時代が来るんだ」と。
「なかなか良い話じゃないか」と思い、帰国して作った会社がこの「シンフォニーマーケティング」です。だから、当社が創業以来ずっとやりたかったことが、この「オーケストレーション」なのです。

庭山:今の時代、データマネジメントもコンテンツも、一人で全部できる天才なんて存在しません。それぞれの高い専門性を持った人間がバラバラに動くのではなく、共通の戦略(譜面)のもと、CMOやCROという「指揮官(指揮者)」のタクトに合わせて組織が一つの音を奏でる。これこそが、次の20年で日本企業が絶対に構築しなければならない経営戦略の正体です。
そのためにも、先ほど言った「アラインメント」が必要になります。楽譜の読み方が全員違っていたら、オーケストラはバラバラの雑音しか出せませんからね。
19歳、図書館から始まった44年の旅。そして次の20年を拓くリーダーへ
MZ:最後に、今後20年に向けてメッセージをいただけますか。
庭山:振り返ると、私がマーケティングに出会ったのは19歳の時でした。大学の図書館でセオドア・レビットの『マーケティング近視眼』という論文を読んだ瞬間、頭を殴られたような衝撃を受け、以来BtoBマーケティングに没頭し続けてきました。それから44年が経ちますが、今でも1ミリも飽きていません。三度の飯より好きなものに出会えたことは、本当に幸せなことだと思っています。
だからこそ、私をここまで育ててくれたマーケティングという世界に、そして日本のBtoB業界に「恩返し」がしたい。その一心で、大学で教えたり、本を書いたり、研修事業に力を注いだりしています。時にはあえて厳しい現実を本や講演で発信しているのも、まずは経営層の意識を変えていくことが、何よりも先決だと考えているからです。

これからの20年を担うビジネスパーソンに伝えたいのは、マーケティングというのは単なる販促活動ではなく、「経営そのもの」だということです。これほどエキサイティングで、組織や会社を動かせる面白い仕事は他にありません。
日本の企業は、本来ものすごく強い底力を持っています。デマンドジェネレーションをはじめ、マーケティングの仕組みが組織全体で正しく機能すれば、ここからいくらでも強くなっていける。そこには必ず、日本企業が再び躍進する未来があるはずです。
