AIとの壁打ちのポイント、論点設計を「任せきる」リスク
仮説の生成においては、AIに頼ることで「致命的なミス」はほぼ起きません。仮説はあくまで検証前の見立てであり、データを見た結果として修正・棄却されることは想定内だからです。多少的外れな仮説が混じっていても、分析を進める中で自然と淘汰されます。
一方、論点設計については、話が別です。
AIは「もっともらしいが的外れな問い」を立てることがあります。たとえば、経営課題として「優良顧客の離脱を止めて既存顧客基盤を守りたい」という優先度が明確にあるにもかかわらず、AIが「新規顧客獲得のためにどの年代層にアプローチすべきか」という論点を提示してしまうケースです。どちらも一見もっともらしい問いですが、今解くべき課題とは方向がまったく異なります。
なぜこうした「ズレ」が起きるのか。ひとつはビジネスの優先順位や社内の文脈がAIには伝わっていないからです。「今の経営判断では、コスト最適化より顧客維持が最優先」「このカテゴリは戦略的に縮小中で、深掘りしても意味がない」、こうした背景情報をプロンプトに盛り込まない限り、AIは一般論として妥当な問いを立てるにとどまります。
もうひとつは、AIには「問いの良し悪し」を自律的に判断する力がないからです。AIは与えられた情報から「それらしい問い」を生成することは得意ですが、その問いが本当に今のビジネスの核心を突いているかどうかを見極めることはできません。渡す情報が薄ければ、返ってくる論点も的外れになる。壁打ちの質は、人間側の情報の渡し方で決まるのです。
だからこそ、「問いの質」のレビューは必ず人間が行う必要があります。AIが出した論点を鵜呑みにするのではなく、「これは本当に今、自分たちが解くべき問いか?」と立ち止まって確認すること、それが良い分析には必須です。
次回は、問いと仮説が固まったところで、実際の分析をどう設計するかを扱います。「何のデータを」「どう集めて」「どう分析するか」を描く、分析設計フェーズです。ここが曖昧なまま進むと、後工程で手詰まりや手戻りが頻発します。AIを使った分析設計書の作り方を、具体例とともに解説します。
