事例アワードへの応募は「実践知のラーニング」
――山口さんにはBEST OF MARKETING AWARDの審査員を務めていただきます。今のお話を踏まえると、自分たちの取り組みを言語化して振り返ること自体に価値がありそうですね。事例アワードに応募する意義について、どうお考えですか。
大きく3つあります。1つ目は、応募するということ自体が、先ほどお話しした実践知のラーニングそのものだということです。実践知は、自分の中にある暗黙知なままでは外部に価値として認められにくい。人に説明して価値を認めてもらうように分解・整理・言語化する過程で、取り組みに対する解像度が高まり、再現可能な実践知になります。
2つ目は、社内でのブランディング。マーケの仕事はブラックボックスで、社内からも「何やっているかよくわからない」と思われがちです。客観的な第三者の媒体に表彰されたという事実は、社内でのチームの評価に意外と効きます。
3つ目は、転職時のクレデンシャルになるかもしれません。事業成長の実績そのものには及びませんが、プラスの側面があるでしょう。
下剋上のボーナスタイム、名乗りを上げるなら今
――最後に成長を目指すマーケターや事業責任者にメッセージをお願いします。
難しいですね。何に悩むかというと、AIがもたらす変化の着地点がどの辺りに落ち着くのか、ベクトルの大筋はわかっても、その変化の速度と収束した世界の予測は正直誰もわかりませんから……。
今一番言えるのは、変化が激しい分、試行錯誤できるすごく楽しい時期だということでしょう。そして新しいパラダイムが始まる時期は「下剋上で名乗りを上げるチャンス」です。 マーケットでポジションや順位が入れ替わる時――たとえばEVが主流になったらトヨタは王者ではなく、BYDが勝つ可能性があるのは、エンジン車の時代が続いたら起きなかった構図ですよね。
マーケティングの世界も、AI×マーケティングの覇権を確立した人はまだいない。さらに言えばAI×CRM、AI×何とかと細分化すれば山ほどある。デジタルマーケティングが出てきた時も、新しい広告代理店や新しいプレーヤーが生まれ、個人も支援会社も多くの下剋上が起きました。
ブランドの世界でも、昔はCI(コーポレート・アイデンティティ)屋さんしかいなかったのが、「顧客体験こそがブランドを作る」と言って、UXやCXの人がプレーヤーに名乗りを上げた。今はまさにその渦中で、本質は変わらずとも、AIの活用や浸透の巧拙によって、マーケティングに関わる個人、事業会社、支援会社の業界地図が塗り変わるタイミングです。個人のキャリアとしても、チームとしても同じことが言えます。
最近、私の同世代のデジタルマーケティングで育ってきた人たちが、デジタル活用が当たり前になった現代の大手企業でCMOや事業会社の責任者クラスに増えてきたことを実感しています。その人たちは、20代の頃から苦労して積み上げたデジタルの肌感覚がないと事業運営できないからと引き上げられている。
デジタルマーケティングの世界では20年かかりましたが、AIではもっと早まるかもしれません。だから下剋上したい人にとって、これから数年間はボーナスタイムです。私も変化への怖さはありますが、大きなチャンスでもあり、現在進行系で楽しんでいます。
挑戦を恐れない、すべてのマーケターへ。
MarkeZineでは、現在マーケティングアワード「BEST OF MARKETING AWARD 2027」への応募を受け付けています。書類応募のみで参加可能、締め切りは2026年11月9日まで。皆さんの日々の取り組みや挑戦、先進事例などをぜひご応募ください!
