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MarkeZine Day 2026 Autumn

世界動向の先を読む「もう1つの視点」

「サードプレイスの終焉」スターバックス日本売却と米中カフェ競争の激化

自社の床1坪か、顧客のスマホ1タップか

 「Luckinのように店舗面積を削ってオンラインへ寄せればいい」という単純な話ではない。店舗で飲食を提供する事業には、次元の違う3つの道がある。

 第1は、場所そのものを商品として磨き続ける道。コメダや猿田彦の国内店、焙煎マスターの個人店、行列のできるラーメン屋、江戸前寿司のカウンターがそれだ。第4プレイスの利便性を上回る価値を「ここの椅子」に持たせる王道である。

 第2は、人気店を多店舗展開する道。店舗が増えた瞬間、人気は利益に直結しなくなり、「場所のリスク」を直営で負うかFCに渡すかが成否を分ける。その出口に、スターバックスの「ブランドと徴収機能への集中」が生まれた。

 第3は、受け渡し拠点(結節点)に徹する道。LuckinやCottiは都市部の動線に最小限の床とアプリを重ね、くつろぎ客と受け取り客が混在する「自家中毒」を設計段階から排除している。

 どの道でも共通するのは、「店舗はくつろぐ場所だ」という無意識の前提を一度白紙に戻すことだ。自社の床1坪ごとに、どんな価値を生むのか、何の結節点として対価を生むのかを問い直す。「自社はスターバックスほどの規模ではない」と読み流すなら、この章の値打ちは半減する。効く気づきは4,000億円の売却劇そのものではなく、Luckinの市場への入り方と、スターバックスの資本政策の転換、そして業態の大改革にある。

 アプリ利用は静かに広がり、決済は一瞬、コーヒーは美味しく、デザートは目新しい。そして店舗はシレッと増減する。ニューヨークのZ世代の日常にすでに定着したこの変化は、対岸の火事ではなく時差でやってくる。

 自社の床1坪と、顧客のスマホの1タップ、どちらが強い接点か。銀行の支店でも、アパレルの路面店でも、駅前の書店でも、自社オフィスの会議室でも、椅子の価値を「測られる側」から「測る側」へ回るための思考へのヒントだ。

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2026/08/31 09:00 https://markezine.jp/article/detail/77451

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