顔を見て話せる“明るい会議”の世界観
――テレワークの急増といった環境変化は他の競合ツールにとっても同じですが、Zoomに支持が集中した理由は、何だとお考えですか?
佐賀:ひとことで言うと、つながりやすくて切れづらいというプロダクトの基本性能に尽きると思います。これが徹底しているので、画面に何人が参加しても映像が遅くなったり乱れたりしない。だから、顔を見ながらちゃんと使える。この技術力は、“明るい会議”の世界観を下支えしています。導入企業やユーザーさんにZoomの優位性を聞かれたら、基本性能と世界観の違いが2つの大きな理由だと答えています。
――明るい会議、というのは確かに納得の言葉ですね。ひと昔前のWeb会議だと、映像の乱れが多くて、結局顔を見ずにそれぞれが資料を読みながら進めていたようなイメージがあります。
佐賀:顔を見て話せることによる明るさが、我々が実現している世界観であり、大きな価値だと考えています。実は8年ぶりにこの業界に帰ってきたところ、海外では2桁%で伸びているのに日本の市場は年に数%しか伸びていなかったんです。それは、やはり顔を見ずに資料とにらめっこする“暗い会議”の延長でWeb会議を捉えていたから、新しい需要を開拓できていなかったのだと思います。
つながりやすく切れづらいから、ちょっとした話も大人数でも、あらゆるコミュニケーションにZoomを提案できます。
――そうした価値をきちんとユーザーに伝えるために、どのような訴求をしているのですか?
岡澤:他のプロダクトとは世界観が違うことと、圧倒的につながりやすく切れづらいことを強調しています。やはり体験していただいて初めてわかる部分も大きいので、体験いただくことを促しています。また、Zoomは何かと聞かれたら、必ず「ビデオを中心としたセキュアなコミュニケーションプラットフォーム」だとお答えしています。単なるWeb会議ではなく、オンラインで顔を見ながら安全にコミュニケーションを図れるツールだと認識していただきたいので、それを前面に出しています。
場所を問わない高品質な対話が地域的サイロを壊していく
――マーケティング活動において重視している指標や、昨今の状況によって変化している部分などはありますか?
岡澤:元々本社のマーケティングで指標としているパイプラインの目標があり、その3分の1程度をマーケティングが担えるようにプランニングしていました。ただ、にわかに訪れた急拡大に際して、ブランディングと広報に今は重きを置いています。取材を受けることもとても増えました。
マーケターの皆さんはこれまで考えてきたプランをオンラインに置き換えないといけない状況になっていると思いますが、当社も同じで、3月初旬の記者発表会は急きょオンラインで実施したんです。すると、記者さんには移動時間がないことや参加しやすさ、録画が見られるといった点で好評で、オンラインへの意識も大きく変わっていると実感しました。
私たち自身もシフトしながら、マーケターの方々にはビデオを中心としたコミュニケーションプラットフォームを有効に使っていただき、オンラインでのリード獲得やナーチャリングの知見もともに探れればと思っています。
佐賀:セミナーや記者会見のオンライン化に取り組むのは、メリットしかありません。物理的なセミナー会場で吸収できない大人数でも問題ありませんし、アーカイブも残せる。自粛が解けた後も、リアル+オンラインで実施すれば柔軟性も上がると思います。
――ビデオを中心としたコミュニケーションがさらに浸透すると、今まで当たり前だと思っていた商習慣なども覆りそうですね。最後に、今回こうして皆のオンライン経験が増えることで、日本のビジネスや個々人の働き方がどう変わるとお考えですか?
岡澤:ビジネスの観点では、ウェビナーなどオンラインの活動に躊躇する方もいらっしゃいますが、一歩踏み出していただければ必ずメリットが見えてくると思います。また、働き方の観点では特にテレワークは確実に定着するでしょうし、柔軟な働き方を尊重する文化もできていくのでは。そういった変化を期待したいです。
佐賀:以前から、ビジネスにおける地域的なサイロがなくなるといいと思っていました。IBM時代に北海道で働いていた際、テレカンで東京の会議に参加しても、聞いているだけになりがちで、あまり影響力も持てなかった。今もそうした地域のギャップや、在宅勤務だと発言権が弱いといったこともあります。離れていても高品質な会話ができるZoomが、そんな日本社会のサイロを破壊する役割を果たすと思います。
顔を見て話すことの価値は、以前はWebex時代の仲間に話してもわかってもらえませんでしたが、この1年で大きく変わりました。各社が何画面表示可能、などを競うようになった。もっと進んで、顔が見えるコミュニケーションが標準になるといいですね。決して負けませんが(笑)。