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なぜ今マーケターがプライシングを学ぶべきなのか

Appleからウォルマートまで!様々な企業が実践するプロモーションと親和性の高い八つのフレームワーク

 昨今、エネルギーの需給バランスの崩壊などにより商品・サービスの値段が上昇している。しかし、過度の値上げは顧客離れを引き起こしかねない。そこで、野村総合研究所のコンサルタントである下寛和氏がプライシングの流儀をマーケター向けに解説。連載の第5回では、24の価格戦略フレームワークの残り一つであるプロモーション型について、紹介する。

八つのタイプが存在するプロモーションの型

 これまで「24の価格戦略フレームワーク」を一つずつ解説してきた。最終回となる今回は、プロモーション型を解説する。

 なお、24の価格戦略フレームワークにはそれぞれ「価値」「競争」「コスト」「消費者心理」という「価格決定基準」なるものが存在する。たとえば、「価値」基準とは「消費者の立場で商品・サービスの価値がどれだけあるか」を起点に価格を決定するものだ。その他の基準については、連載の第3回で詳しく解説している。

 そして、本題のプロモーション型のフレームワークには、「スキミング・プライシング」「ペネトレーション・プライシング」「EDLP」「差別価格」「ティアード・プライシング」「客寄せパンダ」「サブスクリプション」「バンドリング・アンバンドリング」と、八つのタイプが存在する。早速、順に見ていこう。

24の価格戦略フレームワークのマッピング。本連載ではこれまで、「市場均衡型」「心理効果型」「ブランディング型」を見ていった。【クリック/タップで拡大】

スキミング・プライシング

 価値基準のプライシング・フレームワーク。新商品の発売初期には高い価格に設定し、その後、市場の競争状況や成長に応じて価格を引き下げる手法だ。この手法は、多少値段が高くても新商品を早く手にしたいと考える消費者、いわゆる「イノベーター」に有効で、新作が発売される度に販売店の前に行列ができる「iPhone」などはその典型例だろう。

値段をあえて抑えることで、市場浸透を優先

ペネトレーション・プライシング

 ペネトレーション・プライシングは、競争基準のフレームワークの一種。新商品を市場に投入した直後はあえて低い価格に設定。これにより、市場シェアを一気に拡大させ、競合が自社に追随することを防ぐことを目指す。なお、penetration(ペネトレーション)とは「商品・サービスが普及すること」を意味し、別名「市場浸透価格」ともいう。

 例としては、トヨタ自動車とソフトバンクのエピソードが有名である。ハイブリッドカー市場においてHonda「インサイト」の売れ行きが堅調だった際に、トヨタ自動車は新型の「プリウス」のエントリーモデルを、値段をかなり低い水準に抑えてリリースした。また、ソフトバンクは、日本にiPhoneを初上陸させた際、ガラケー文化の日本市場でスマホを浸透させるため、現在と比べてかなり低価格で商品を販売していた。

EDLP

 EDLPは、競争基準の価格戦略フレームワークだ。EDLPは「Everyday Low Price(エブリデーロープライス)」の略であり、“商品をいつでも低価格で提供する”という考え方である。

 米国の小売大手・ウォルマートの経営理念でもある。EDLPの最大の特徴は、いつ購入しても安いことだ。これによって顧客に安心感を与え、「自分だけ高い価格で商品を購入してしまった」という不安を抱かせない。西友や業務スーパーなどがEDLPの例として有名であるが、ダイソーやセリアなどの100円ショップも広義には含まれる。

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この記事の著者

下 寛和(シモ ヒロカズ)

 株式会社野村総合研究所 グローバル製造業コンサルティング部 グループマネジャー。慶應義塾大学卒業後、トヨタ自動車、会計系コンサルティング会社を経て、2014年に野村総合研究所に入社。専門はプライシング、原価企画、SCM、データサイエンス。日経BP「プライシングの技法」、技術情報協会「利益を拡大させるプライシング戦...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/08/18 09:00 https://markezine.jp/article/detail/43025

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