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『MarkeZine』(雑誌)

第113号(2025年5月号)
特集「“テレビ”はどうなる?」

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事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

カンヌライオンズ審査を終えて。今成功するPRキャンペーンの「5つの視点」を事例で学ぶ

(3)文化理解:DoorDash「Basketball 2.0」

 DoorDashは、NBAファンとのつながりを深めるため、カーティス・ブロウの名曲「Basketball」の40周年を記念したキャンペーンを展開しました。1984年に発表されたこの曲は、バスケットボールへの愛や、ストリート文化との結びつきを表現したもので、DoorDashはそれを「Basketball 2.0」として現代風にリメイク。カーティス・ブロウ本人に加え、WNBAやNBAのスター選手も出演するミュージックビデオを制作しました。このキャンペーンは、単なる広告ではなく、ブランドが文化の一部として関わろうとする姿勢が高く評価されました。

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公式の動画より

 グローバル化が進む今の時代においても、生活者の心に響くのは、地域のコミュニティやその土地の文化を尊重しているブランドだと考えられます。そのため、文化的背景に根ざしたPR活動は、今後も高い効果を発揮する重要な手法であると捉えています。

(4)競合との差別化:VICTORIA「SIX BACK」

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公式の動画より

 メキシコでは、年間およそ250万トンものビール瓶が廃棄されています。しかし、そのうちリサイクルされているのはわずか12%。多くの人々にとって、リサイクルはまだ日常的な習慣とは言えません。

 メキシコの伝統的な祝日「死者の日(Día de los Muertos)」は、毎年11月1日と2日に行われる大切な行事です。この日は、亡くなった家族や友人の魂が一時的に帰ってくると信じられており、人々は自宅に祭壇を飾り、故人の好物や飲み物を供えて迎えます。メキシコで最もビールが消費される日でもあり、同時に大量のビール瓶が捨てられる日でもあります。

 そこで、メキシコの老舗ビールブランド「ビクトリア(Victoria)」は、「死者の日」にビール瓶6本入りのリサイクルパックを配布。このパックは、事前に店頭や宅配サービスを通じて回収した空き瓶を再利用回収対象には他社ブランドの瓶も含まれており、それらを洗浄し「ビクトリア」のラベルを貼り直して再生。まさに、本来なら捨てられるはずだった瓶が「死者の日」に、新たな命を得て人々の手に戻ってくる - そんな「再生」の象徴として、人々から多くの注目を集めました。また、他社の瓶も使われていたことから、ビクトリアが「アルコール業界における、環境のリーダー」であることが暗に伝えられました。

 このキャンペーンの結果、前年と比べてビール瓶のリサイクル率は32%も増加。メキシコにおけるリサイクル意識の向上に大きく貢献しました。

 今回のビクトリアの事例のように、競合を意識したPRキャンペーンが今年は多く見られました。

 例として、Wendy'sは、アイスクリームメーカーが壊れたマクドナルド店舗をリアルタイムで把握し、その店舗のすぐ横にアイスクリームトラックを配車。困った顧客に対してアイスクリームを無料で配布したことで注目を集めました。

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公式の動画より

 他にも、フランスの配車アプリHeetechは長期的な顧客リレーションを重視し、オリンピック期間中に地元民に対してのサービスに集中するために、あえて訪仏外国人客に対して競合のUberを推薦したことで話題に(動画)。そしてPizza Hutは「世界ドミノ選手権」の公式スポンサーになったことで関心を集めました(出典記事)。

 このように他社との違いをはっきりと伝えるPRキャンペーンは、飽和化する市場の中で、ブランドの個性や強みをアピールするのに効果的と考えられます。また競合を意識したキャンペーンはユーモアや挑戦的な表現を取り入れることが多く、ソーシャル上で話題になりやすい傾向が見て取れました。

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(5)データの活用:IMPERIAL 「DE VUELTA A CASA(帰る場所へ)」

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この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director

営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとのオペレーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49374

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