課題は「見るだけ」のデータ。バラバラのKPIは顧客理解を阻む
(写真右)同社 CRM部 寺岡香織氏
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず初めに、CRMの抜本的な改革を行う背景にあった課題を教えてください。
大西:CRMの本質は、顧客との関係を強化し、最終的に自社(ブランド)のファンになっていただくことだと考えています。しかし、私が着任した当時は、顧客データを見る仕組みはあっても「見るだけ」に留まっていました。データを活用して「顧客化=ファンを増やすこと」につなげる仕組みが欠落していたのです。
また、CRMの経験や知識の差も課題でした。勉強熱心なブランド担当者がCRMを調べ、「F2転換率が重要だ!」となれば、当然そこを注視します。もちろん指標としては重要ですが、転換率が上がってもターゲットとする顧客の母数が縮小すれば、売上の拡大は見込めません。 こうした大前提の認識が揃わないまま、各々が「あれもこれも大事」と多様なKPIを立ててしまった結果、指標も顧客理解の基準もバラバラな状態になっていました。
MZ:実務を担う現場としては、どのような課題を感じていましたか?
寺岡:当時もデータは参考にしていましたが、あくまで「点」での分析に留まっていたように思います。ブランドとの定例会でも「今月はこの数値がこうでした」という報告で終わってしまい、「どんなお客様が、なぜ購入したのか」という深掘りができていませんでした。 結果として、施策は“勘と経験”に頼らざるを得ず、「このままではビジネスが頭打ちになる」という強い危機感がありました。
大西:加えて、既存のツールやシステムが「単にデータを見る」「決まりきった施策を出す」だけのものになっていたことも大きいです。長年の継ぎ足しで複雑化し、社内の一部の人しか使えないブラックボックスになっていました。本来ファン作りのためのツールが、いつの間にか現場を「ツールでできること」に縛り、自由な発想を阻んでいたのです。そこで、ジュンのCRMを再設計するには、仕組みそのものから変える必要があると確信しました。
「業務フロー」ではなく「国」を変える決断
MZ:CRM再設計において重視したことは何でしょうか。
大西:事業会社としてのCRMの目的はシンプルに「売上の向上」、つまり「ファンを増やすこと」です。今回の取り組みでは、まずその定義を社内で徹底。その上で、現場が自律的にファン化を促進できる仕組み作りを決意しました。
藤掛(ブレインパッド):お話を伺って感じたのは、本来「使う」ためのツールが、いつの間にか現場を縛る「制約」になっていたということです。文化や人は簡単には変わりません。だからこそ、大西様はあえて仕組みを刷新し、思考の制約を物理的に取り払うことで、組織を強制的に変容させる経営判断をされたのだと理解しました。
大西:そのとおりです。単に「業務フローを変える」という生易しいことではなく、目的は「国ごと変える」くらいの覚悟で、新しい仕組みに変えたほうが早いと考えました。また、不要なデータを整理し、コスト削減を図る狙いもありました。
(写真左)同社 マーケティングトランスフォーメーションユニット 後藤 淳志氏
(写真右)同社 流通・小売事業部 日高 翔平氏
MZ:こうした課題に対し、ブレインパッドはどのようにサポートしたのでしょうか。
日高(ブレインパッド):最初、大西様のお話をお伺いし、単なるシステムの刷新では解決しない課題だと理解し、まずは関係者の皆様へ丁寧にヒアリングを行い現状課題の把握を徹底しました。そして、「ファン化のために継続アクションができる仕組み化と顧客の可視化」と「KGIにひもづく統一指標(KPI)の再整備」、そして「自走化のための伴走支援」を計画しました。
MZ:パートナーとしてブレインパッドを選んだ決め手は?
大西:数多くのデータ利活用実績と、CRMの豊富な知見です。また、自社でマーケティングツールも提供されており、戦略から実行まで一気通貫でサポートいただける点が心強かった。単にSaaSツールを入替し導入するだけでは、今回の「再設計」は難しい。ブレインパッドさんの総合的なマーケティング・ソリューションなら、我々のパートナーとして相応しいと考えました。

