5Sフレームワークが示す、顧客理解と事業判断のつながり
この連載では、5Sフレームワークのステップを一つずつ解説してきました。改めて振り返ると、一つの企画の中に、顧客理解が何度も現れることに気づきます。
最初に見るのは、顧客が抱える困りごとです。次に、市場や競合が顧客からどう評価されているのかを読み、自社の強みがどの場面で思い出されるべきかを考えます。さらに、接点ごとに何を伝えるのか、どの条件が見えれば前に進めるのか、一定規模で受け入れられる見込みがあるのかを確認していきます。
これらはすべて、顧客をどう理解するかによって変わります。本来、売上や成果は、企業側の努力だけで生まれるものではありません。どれだけ企画を練り、施策を打ち、社内で合意を重ねても、顧客が「これが欲しい」と感じ、実際に選ばなければ成果にはつながりません。
当たり前のことのようですが、実際のビジネスでは、この顧客視点が軽く扱われてしまう場面が少なくありません。社内で説明しやすいか、既存のKPIに乗せやすいか、部門ごとに実行しやすいかが優先され、顧客がなぜ迷い、なぜ選び、なぜ離れるのかという問いが後回しになる。ここに、顧客理解が事業判断に十分活かされないという課題があります。
だからこそ、顧客理解はプロモーションの前工程にとどまりません。戦略、投資、商品開発、KPI、各部門の意思決定に反映されて初めて、事業を動かす力になります。
私が重視しているのは、顧客理解を一部門の活動や一時的な調査結果で終わらせず、戦略の中心に置き続けることです。5Sフレームワークは、現場で生まれた直感や違和感を、顧客理解に基づく戦略仮説へ育てるための思考の手順でもあります。その思考を組織の中で共有し、意思決定に反映していくことで、顧客を起点に事業を判断する力につながっていくと考えています。
まとめ:アイデアを、戦略仮説に磨く力を育てる
生成AIの普及によって、こうしたプロセスは以前よりずっと取り組みやすくなりました。それでも、最後に選び取るのは人間です。どの顧客を見て、どの場面で勝ちにいき、どの条件が見えれば前に進むのか。AIとの対話を通じて問いを広げながら、最後は自分たちの責任で判断する。これが、5Sフレームワークを通じて伝えたかったことです。
もっとも、その判断の質には、マーケターの経験やスキルも影響します。ただ、SeeからSettleまでのステップを一つずつたどり、AIと壁打ちしながら思考することを繰り返せば、直感を戦略仮説へ組み立てる力は磨かれていきます。これから経験を積んでいく人ほど、この手順を「戦略を考えるための型」として使ってみてほしいと思います。
現場で生まれたアイデアが、顧客理解とデータによって戦略仮説へ磨かれていく。そんな仕事が増えれば、ビジネスはもっと面白くなると信じています。本連載をお読みいただき、ありがとうございました。
