売上ポテンシャルを見立てるための購買プロセス分析
では、ここまでの話を踏まえ、売上をどのように見立てれば良いのでしょうか。その基本となるのが、売上を生活者の購買プロセスに分解する考え方です。
ポイントは、購入意向だけを売上の予測指標とするのではなく、「生活者が商品を知ってから購入するまで」の各段階をそれぞれ指標として捉えることです。
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たとえば上市前にパッケージの受容性を確認する調査では、「その商品を買いたいか」だけでなく、「コンセプトから価値を理解できたか」「実際の売場で商品に気づいて手に取るか」「購入候補に入るか」「どの程度の頻度で購入しそうか」といった項目を確認します。
こうして調査で取得した生活者評価に、発売後に想定される認知や販売機会、価格などの前提条件を加え、既存商品の販売実績と各指標を相対的に比較します。これにより、購入意向だけに頼らず、購買プロセス全体から売上ポテンシャルを見立てることができます。パッケージができていれば、棚の中で気づかれ、手に取られ、選ばれるかという評価を加えます。試食や試用ができる段階であれば、製品体験後の評価も確認します。
このように各段階を指標化すると、売上ポテンシャルだけでなく、売上目標達成に向けてどこがボトルネックになっているのかも見えてきます。たとえば、コンセプトの購入意向が低ければ、生活者に提示するベネフィットを見直す必要があるかもしれません。一方、コンセプトの評価が高くても棚で見つけてもらえないのであれば、パッケージや店頭での見え方を検討したほうが良いでしょう。
【事例】購入意向は同等でも「売上予測に2.4億円の差」
ある食品カテゴリーの新商品で、2種類のコンセプト(およびパッケージデザイン案)を比較するとします。各コンセプトを提示して購入意向を確認したところ、2つの案の評価に大きな差はありませんでした。購入意向だけを見れば、どちらの案を採用しても、売上への影響はそれほど変わらないように感じます。
ところが、それぞれのパッケージを模擬棚に並べ、実際の買い物に近い環境で行動を確認すると違いが表れました。一方の案は、もう一方の案よりも棚の中で手に取られ、購入商品として選ばれる割合が高かったのです。
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具体的な数字では、購入意向はコンセプト案1が76.8%、コンセプト案2が78.2%と、大きな差がありませんでした。一方、模擬棚での選択率はコンセプト案1が65.1%、コンセプト案2が51.2%となり、明確な差が見られました。
さらに、購入頻度や価格などの条件も含めて売上ポテンシャルを見立てると、コンセプト案1はコンセプト案2を約2.4億円上回るという予測結果になりました。生活者から「買いたい」と思われる度合いはほぼ同じでも、2つの案の最終的な売上の見通しには大きな差が生まれたのです。
【まとめ】未来を「当てる」より、生活者の選択を理解する
「需要予測」という言葉からは、未来の売上を一点で当てる技術を想像しがちです。しかし、マーケティングにとってより重要なのは、なぜその見通しになるのかを理解できることです。
認知が広がらないのか。価値が伝わらないのか。考慮集合に入れないのか。買える場所が足りないのか。候補には入るが選択の配分が小さいのか。購入後の体験が次につながらないのか──。こうした問いに分解できれば、予測と実績が異なったときにも、差が生まれた理由を振り返れます。
市場環境が変化しても、売上をつくる主体は生活者です。商品に気づき、自分に関係のある価値として受け取り、複数の候補から選び、体験し、再び選ぶ。その小さな意思決定が何度も積み重なって市場、すなわち売上が形成されます。
購入意向は、この長い購買行動のプロセスを知るための有力な手がかりです。ただし、それだけが答えではありません。生活者の意識と行動を購買プロセスに沿って追うことで、売上という数字の向こう側にいる生活者の姿が、より具体的に見えてくるでしょう。
そして、その姿を丁寧に想像することこそ、不確実な時代に商品やブランドの次の一手を考えるための、最も確かな出発点ではないでしょうか。
