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ヒットの裏にマーケあり

書道家・武田双雲「唯一無二の作品はコミュニケーションが導く最大公約数から生まれる」

 数々のヒット作の裏側には、どのようなマーケティングが潜んでいるのか――。デジタルマーケティングのコンサルティングでこれまで1,500社を超える企業を支援してきたナイル。その代表で起業家の高橋飛翔(ひしょう)が、各界の著名人と対談を行い、ヒットの裏に隠されたマーケティングを深掘りしていく連載企画。記念すべき第1回のゲストは、書道家の武田双雲さん。一流にまでのし上がったその軌跡や書道の概念を変える斬新な作品を生み出し続ける秘策について迫りました。

マーケティングは最大公約数の思いやり

武田 双雲(たけだ・そううん)

 1975年、熊本県生まれ。書道家の母の影響で、大学卒業後約3年勤めたNTTを退職して書道家に転身。

 NHK大河ドラマ「天地人」をはじめ、数々の映画やドラマ、イベントの題字、商品ロゴなどを揮毫するほか、個性的な個展や書道パフォーマンスなど、独自性の高い創作活動で話題に。書道の域を超えて現代アーティストとしても活躍中。

高橋飛翔(以下、高橋):今回のテーマは「書道家、武田双雲さん×マーケティング」です。芸術は自分や自分の生み出す作品が受け入れられるかどうかという側面もあり、マーケティングとはかけ離れている印象がある一方で、広く「世の中に伝える」という点では共通するものを感じます。武田さん、よろしくお願いします。

武田双雲(以下、武田):よろしくお願いします。そうですね、マーケティングとか戦略というとバリバリしすぎたイメージがありますけど、言い換えると「思いやり」じゃないですか。

 たとえば僕の場合、駅前に出す広告なら人の流れが速い中で立ち止まらせる要素がいるし、キャッチコピーを書くときは、その言葉が読みやすくないといけない。飲食店のロゴであれば、食事をする人が痛そうに感じないように、筆先に丸みを持たせるとか、自分の思いを捨てて、依頼者と作品を目にするすべての人の最大公約数を考えます。

 書道でも商品でも、広く伝えるには、様々な人の頭の中を知らないといけないですね。

高橋:そうなんです。企業も売上を上げたいと自分本位で考えがちですが、顧客の立場からどう見えるのか、顧客はどのようなメリットを得られるのか、というところに立ち返ることが「人に届ける」という意味では大切だと思っています。マーケティング支援の現場でもそのようなアドバイスをさせていただくと、話が進んでいきますね。

とにかく全員を喜ばせたい

高橋:双雲さんは「マーケティングは、言い換えると思いやり」の考え方をどのように導かれたんですか?

武田:マーケティングを学んだわけではないので、みんなを喜ばせたり盛り上げたりしたい元来の性格が活きているのかな。年齢も性格もバラバラな生徒さんが集まっている書道教室でも一人残らず笑わせたいとか、とにかく全員じゃないと気が済まないんです(笑)

 以前、CM撮影をさせていただいたときも、制作現場の緊張を解くのに、その場にいた監督さんやカメラマンさんなど全員の手のひらに好きな文字を書いたことがありました。その場にいる全員でチームになって、気をそろえることが重要だと思ったんです。

 それで、場が和んだところでどう書くのがいいかをみんなに聞いて、方向性を整えました。その際、意見が2つに割れたんですけど、それまで控えめだった現場監督が「絶対にこっちです!」と。その目が確信めいたいい目をしていて、満場一致で「それにしよう!」となりました。そうしてできたCMはすごく話題になって、賞もいただいたんです。

高橋:それはすごい! その場でチームの最大のパフォーマンスを引き出すために、全員がリラックスできる状態を作る。さらにヒアリングをして、世の中が求めていることをあぶり出す調査もしていますよね。そして最後に、監督の核心を引き出して形にする。そのプロセスがものすごくマーケティング的です(笑)。

武田:意図せずマーケティング思考ができていたんですね(笑)。一つ言えるのは、僕は自分が気になる人だけを盛り上げればいいというタイプではないことです。自分が届けたい人はもちろん、犬も猫も、蛇だって笑わせたい。よく虫と対話したり、葉っぱに声をかけたりするんですけど、森羅万象と共鳴心理を起こしたいし、仲良くなりたいんです。もしかしたら、そんな思いが今の武田双雲の幅広さにつながっているのかもしれないです。

ここにマーケあり!

・「マーケティングは、言い換えると思いやり」という言葉は、とても双雲さんらしく、かつ本質を捉えた言葉だと感じました。自分の気持ちを優先せず、「依頼者や作品を目にする人たちにどんな感情になってもらいたいか」を考えながら作品を作っていくというプロセスは、極めて顧客志向です。

 書道家は「自分が美しいと思う字を書く」ことを大事にするのかなという勝手な印象を持っていましたが、双雲さんの考え方は根底から違いました。こうした点に、他の書道家と一線を画す人気の秘密があるのかもしれません。

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この記事の著者

高橋 飛翔(タカハシ ヒショウ)

 1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中にナイルを創業。 ナイルにて、累計1,500社以上の法人支援実績を持つデジタルマーケティング支援事業や自社メディア事業を発足し「ナイルのマーケティング相談室」「ナイルのコンテンツ相談室」などを運営。2018年より新規事業として月10,000円台でマイカーが持てる「おトクにマイカー 定額カルモくん」をローンチ。自動車産業における新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/05 08:30 https://markezine.jp/article/detail/37599

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